源流部における粒子形状変化の岩種依存性: 岩盤強度と礫供給源の影響

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タイトル別名
  • Contrasting grain shape evolution in headwaters controlled by rock strength and provenance

抄録

<p>研究背景</p><p>河床材料の形状は粒子の運搬条件を規定しており, 基盤岩石の力学的な特性や,流域内での土砂生産過 程を反映する.河道における下流方向への粒子形状 の変化は,単純な傾向(例えば,ステルンベルグの 法則)を示さないことがあるため,河道の幾何特性 や土砂生産過程との関係性を明らかにすることが河 川地形の発達を考える上で重要となる.粒子形状の 変化傾向を検討するには,地質が比較的単純な地域 を対象に詳細な計測を行うことが望ましく,粒径に 加えて粒子の円磨度を定量することで,河床材料の 生成・輸送過程をより精緻に議論できるようになる だろう.そこで本研究では,青森県津軽山地の母沢 において河床材料の粒径と円磨度を岩種ごとに計測し,流域地形の形成過程を粒子形状の変化傾向から 検討した.</p><p></p><p>対象地域・手法</p><p>母沢は津軽山地の玉清水山から西に流下する河川で あり,源流部から下流に向かって約4 kmの区間を調 査対象とした.この区間の上流側には玄武岩類が, 下流側には硬質頁岩が分布し,ダムや擁壁などの構 造物は存在しない.この区間において15地点で粒径 の計測を行い,そのうち6地点で円磨度を計測した. 粒径は,各地点で100–200 m程度の区間に存在する複 数の砂礫堆を対象として線格子法で計測し,その区 間の代表的な粒径が得られるようにした.各地点で 300粒子以上の中間軸を計測し,岩種ごとに粒径と存 在比を求めた.その結果14地点において頁岩の計測 数が100に満たなかったため,同じ手法で頁岩の計測 数が100になるまで計測した.円磨度については,4 粒度階(2–4 mm, 4–8 mm, 8–16 mm, 16–32 mm)の粒 子をふるい分けして採取し,画像解析(Zheng and Hryciw, 2015; Ishimura and Yamada, 2019)によっ て計測した.同様の調査を支流,崖錐において実施し,支流由来の粒子と,斜面から河道へと直接供給される粒子の形状について検討した.</p><p></p><p>結果・考察</p><p>河床材料の粒径および円磨度の変化傾向は,岩種に よって異なり,玄武岩類の粒子は,D30以上の粒径ク ラスで下流細粒化し,それよりも細粒のクラスはほ とんど変化しなかった.円磨度は,粒度によって傾4.向が異なっていた.16–32 mm,8–16 mmの粒子は上流 側の4地点において円磨度がほとんど変化せず,玄武 岩礫を含む支流から比較的円磨の進んだ粒子が流入し た後に円磨度が増加した.4–8 mm,2–4 mmの粒子は流 下方向に向かって円磨度が一度増加したのち徐々に減 少した.その後,最下流の計測地点に向かって少し円 磨度が増加したが,その増加量は8 mmより大きい粒子 の変化量よりも小さかった.これは,粒子の破砕によ って生まれた低円磨度の粒子は,粒径の小さいものが 多いことが原因だと考えられる. 頁岩粒子の粒径は,上流から5番目の調査地点より上流ではほとんど変化しないのに対し,それよりも下 流にいくにつれて徐々に増加する.粒径が増加し始 めた地点は,頁岩が渓岸に広く露出し始める地点と概ね一致する.これは,粗粒物質が渓岸から継続的に供給された結果,頁岩の粒径が全体的に増加した ことを示唆する.円磨度は,全粒度について最上流で急増するが,頁岩が広く露出し始めるとあまり変化しなくなった.粒径の変化と同様に,斜面から供 給される粒子の影響を強く受けたことで平均円磨度があまり変化しなくなったと考えられる.最下流の 計測地点では,粒径8 mm<の粒子の円磨度が増加した 一方で,8 mm未満の粒子の円磨度はあまり変化しな かった.玄武岩と同様に,破砕によって生まれる低 円磨度の粒子の影響が粒度によって異なることを示 唆する.</p><p></p><p>まとめ</p><p>山地河川の源流部では河道を運搬される堆積物の総 量が比較的少ないため,粒子形状の変化要因が狭い 範囲内で変化する.本研究の結果は,岩種ごとに粒 子形状の変化が大きく異なることを意味しており, その原因を明らかにする上では,粒径と円磨度の変 化を同時に調べることが有用である.</p><p></p><p>謝辞 本研究は,公益財団法人国土地理協会2022年度学術研 究助成を受けたものである.文献.Ishimura and Yamada (2019) Scientific reports, 9, 10251. Zheng and Hryciw (2015) Géotechnique, 65(6), 494-506.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581334682888960
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_14
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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