ニューヨーク市ブルックリン北部におけるジェントリフィケーション

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タイトル別名
  • Gentrification in North Brooklyn, New York City
  • Changes in the 2010s
  • −2010年代の変化−

抄録

<p>ニューヨーク市ブルックリン北部では,イースト川沿いに多く立地していた工場や倉庫が使われなくなり,2005年にゾーニングが変更されるとともに,規制緩和によりウォーターフロントには高層共同住宅が建設された.規制緩和は内陸部にも及び,これがジェントリフィケーションの発現要因となった.2000年代には,Williamsburgにおいて白人人口が増加し,ヒスパニック人口が大きく減少した(藤塚 2015).</p><p> 2008-2012年から2017-2021年までのニューヨーク市における総家賃中央値の変化を検討すると,マンハッタン南部のSoHoや、ブルックリンのBrooklyn Heightsと、WilliamsburgおよびGreenpointでは,総家賃中央値は700ドル以上上昇した.本報告では,ブルックリン北部のWilliamsburgとGreenpointを研究対象地域とする.</p><p> WilliamsburgおよびGreenpointでは高所得者が多く,白人比率が高い「高度ジェントリフィケーション地区」として,森(2023)は示した.Williamsburgの南部にはユダヤ系住民とプエルトリコ系住民,Greenpointにはポーランド系住民が多い.Greenpointには家賃規制された住宅があり,ヒスパニック系住民も多い.家賃規制住宅が投資の対象となると,暖房を使えなくしたり,配管を故意に壊して住めなくしたりする嫌がらせにより,借家人を追い出すという立ち退きが発生した(Schuerman 2019).</p><p> GreenpointとWilliamsburgとの境界のところにはBushwick Inlet Parkが整備された.公園周辺では、高級な共同住宅の開発と都市の緑化がパッケージ化されたグリーンジェントリフィケーションが起こった(Gould and Lewis 2017).さらに,共同住宅建設に際してアフォーダブル住宅を供給すると,建物の高さ規制が緩和される.この公園の近くにおいても,2016年にアフォーダブル住宅は供給されたが,立ち退きを緩和するには遅すぎたとGould and Lewis(2017)は指摘した.</p><p> 研究対象地域については,2012年と2013年に現地調査を行った.工業地域から住宅地域および近隣商業地域や公園にゾーニングの変更されたイースト川沿いの地域において,North Sideでは超高層住宅が建てられたが,South Sideには使われていない工場が残り,Greenpointのイースト川沿いには広大な駐車場があるなど,土地利用は対照的であった(藤塚 2015).本報告では,2013年から2023年までに、研究対象地域の景観は変化したのか,住民のエスニシティはどのようになったのか,統計分析とともに検討する.</p><p></p><p> 文 献</p><p>藤塚吉浩 2015.「ニューヨーク市ブルックリン北部におけるジェントリフィケーション−2000年代の変化−」都市地理学10:34-42.</p><p>森 千香子 2023.『ブルックリン化する世界−ジェントリフィケーションを問いなおす−』東京大学出版会.</p><p>Gould, K. and Lewis, T. L. 2017. Green gentrification: Urban sustainability and the struggle for environmental justice. Routledge: London and New York.</p><p>Schuerman, M. L. 2019. Newcomers: Gentrification and its discontents. The University of Chicago Press: Chicago and London.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581334683030016
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_315
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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