高解像度地形データを活用した災害対応への貢献

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タイトル別名
  • Contribution to disaster response using high-resolution topographic data
  • A case of landslide disaster at Yufuincho Kawanishi, Yufu City, Oita Prefecture in June 2023
  • -2023年6月の大分県由布市湯布院町川西における土砂災害の事例-

抄録

<p>1.はじめに 災害対応において地理空間情報は不可欠な情報になりつつある。地理学では災害の要因となった現象を広範囲において迅速にマッピングし,公表することで,被災地域の把握や緊急車両の通行ルート策定などに資する情報を提供してきた(松多ほか 2012; 後藤ほか 2020など)。また,高解像度地形データを迅速に取得することで捜索活動や災害要因の特定に活用されている(内山ほか 2014; 鈴木ほか 2021)。本発表では,2023年6月30日に発生した土砂災害における高解像度地形データを活用した災害対応支援の過程について報告し,高解像度地形データが果たす役割と課題について議論する。なお,今回の災害対応支援の全体像は三﨑ほか(投稿中)において報告している。</p><p>2.災害の概要 梅雨前線の南下と暖かく湿った空気の流入によって,2023年6月30日から7月1日にかけて大分県由布市の湯布院観測点では最大1時間降水量が68.0 mm(観測史上最多),日降水量は346.5 mm(6月最多)を記録する降水量となった(福岡管区気象台 2023)。この大雨により,由布市湯布院町川西の上津々良川左岸側で大規模な斜面崩壊が発生し,1名が行方不明となった。由布市湯布院町川西は湯布院盆地の西側の山間地に位置する。斜面崩壊の発生地点の大部分は急傾斜地の警戒区域および特別警戒区域に指定されている。</p><p>発表者らが所属する大分大学減災・復興デザイン教育研究センターでは,大分県との連携協定および由布市からの災害派遣要請により,6月30日から7月11日の期間で由布市現地対策本部における災害対応支援を行った。</p><p>3.高解像度地形データを活用した災害対応支援 災害は6月30日の夜に発生し,翌朝には大分県との災害時のドローン活用に関する協定に基づいて,地元業者により空撮映像が撮影・提供された。この映像を判読し,崩壊発生範囲を推定し,被災家屋と地形および地質図,土砂災害警戒区域の情報を重ね合わせた図を作成した。7月3日に新たなドローン空撮映像が提供され,捜索活動の難航と二次被害発生への懸念から,空撮映像をもとにSfM-MVSにより生成したDSMと5 mDEMの差分解析図を作成し,堆積土砂量の分布と土砂移動方向の推定に基づいて,効率的かつ安全な捜索方法・位置を提案した。7月4日にはUAV-LiDARにより発災後に取得されたLiDAR DEMが大分県から提供され,5 mDEMとの差分解析図を新たに提供した。7月5日には発災前のLPデータが由布市から提供され,発災後のLiDAR DEMと発災前のLPデータの差分解析を0.5 m格子で実施し,捜索活動への助言と災害の要因となった現象の推定を行った(図1)。この間,断続的に降雨があったこと,最大6 mの厚さの土砂が狭い谷の中に堆積したことから,行方不明者の捜索は難航し,7月11日に行方不明者が発見された。</p><p>4.高解像度地形データの活用への課題と展望 今回の災害対応では,発災前のLPデータの利用までに5日を要した。一部の都道府県では高解像度地形データがオープンデータ化され,国土地理院は一部地域の高解像度地形データの提供を開始した。オープンデータ化の拡大により,データへのアクセスが容易になり,捜索活動のベースマップとしての利用,高精度かつ迅速な堆積土砂量や分布の推定に基づく効率的かつ安全な捜索活動が可能となる。また,ドローンの活用により発災後の高解像度地形データを迅速に取得できたが,ドローン空撮に関わる規制や災害時の空域制限・飛行調整など,災害現場でのドローンの飛行には多くの障壁が存在する。近年,安価なモバイルLiDARが普及しており(岩佐ほか 2022),災害現場における安全なデータ取得方法が確立されれば,ドローンに加えて高解像度地形データの取得方法の一つになりうる。</p><p>文献:松多ほか(2012)E-journal GEO 7(2).後藤ほか(2020)広島大学総合博物館研究報告 12.内山ほか(2014)CSIS DAYS 2014研究アブストラクト集.鈴木ほか(2021)都市防災研究論文集 8.三﨑ほか(投稿中)砂防学会誌.福岡管区気象台(2023)災害時気象資料.岩佐ほか(2022)活断層研究 57.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581334683036800
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_33
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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