温暖化でスバルバールの周氷河景観はどう変わる?

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  • How Periglacial Landscapes in Svalbard Respond to Global Warming?

抄録

<p>北極域では温暖化の進行が著しい。最近数十年間,スバルバールの地温は0.1~0.2℃/年で上昇し,永久凍土は約1 cm/年で融解している。永久凍土の融解に伴う崩壊や陥没,温室効果ガスの放出に関する研究は増えているが,永久凍土帯特有の周氷河地形の変化を扱う研究は少ない。本発表では,スバルバールの周氷河景観の将来像を野外観測に基づいて予測する。地形により温暖化への応答は異なる。</p><p> 13年間(2005~18)にわたる氷楔多角形土の動態観測では,氷楔破壊(熱収縮割れ目)は年平均または冬季平均地温が低い年に活発化するのではなく,暖冬でも活動層の地温勾配が10℃/mを超える急冷が発生すれば活発化する。温暖化が進んでも,冬の急冷が発生する限り,氷楔破壊の発生は継続するが,活動層厚の増加により割れ目が永久凍土に達しなくなると氷楔の成長は止まると予測される。</p><p> 4年間(2009~13)のマッドボイルの動態観測では,中心部と周縁部で差別凍上が発生し,地表付近で起こる季節的凍上の貢献度が大きい。永久凍土の融解が進んでも活動層全体が湿潤に保たれれば,活動は維持されるであろう。</p><p> 直径約3 mの大型淘汰円形土は,二方向凍結で生じる活動層最下部の析出氷層が融解する際の密度逆転により形成されている。もしも永久凍土の温暖化で二方向凍結が停止すれば,不活発化に向かうことが予測される。</p><p> 永久凍土下の被圧地下水流により,谷底や山麓に形成される開放系ピンゴは,温暖化への応答は遅く,永久凍土が存続する限り形成が続く可能性がある。</p><p> 13年間(2006~19)でHuset岩石氷河の地温は約−4℃から−3℃に上昇した。岩石氷河の表面は2.4~5.0 cm/年で斜面下方に移動し,温暖化に伴って0.17 cm/年で加速している。地下5,9,13 m深に埋設した傾斜計も温暖化で地中変形が加速する傾向を示した。この傾向が続けば,約10年後に中緯度高山帯の岩石氷河と同様な地温(約−2℃)に近づき,顕著に前進する可能性がある。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581334683049344
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_65
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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