クイズラリー・システムを使った環境教育プログラムの試作とエコミュージアム活動への展開

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タイトル別名
  • Prototype of environmental education program using a quiz-rally system and development for ecomuseum activity

抄録

<p>エコミュージアムは,テリトリー,コア,サテライト,トレイルによって構成される。エコミュージアムは,地域をまるごと博物館とみなして,地域の自然・歴史遺産を保全・活用する,住民・企業・行政などが協働して行う活動である。サテライトを回りながら,地域を知ることを大切にする。ただし,地域(テリトリー)は広いので,サテライトを結びつける仕組みや仕掛けがあることが望まれる。そのために案内人やガイドの存在が欠かせないが,プラスアルファも必要である。筆者らはこれまで,広島大学総合博物館の活動の一環として,東広島エコミュージアム活動を行っており,その中でサテライトの動画を制作し,それをデジタル・エコミュージアムとして配信したり,エコミュージアム・ツアーを企画・実施したりしてきた。その他に,大学キャンパス内の植栽樹木と植物データベースを使ったオリエンテーリング的自然観察会を行い始めたところである。本報告では,この自然観察会の仕組みを拡張し,地域のことを歩きながら学ぶクイズリレーの仕組みを作って試行したので,その報告をするとともに,その展開可能性を論じる。</p><p> これまでに行ってきたキャンパス内の植栽樹木と植物データベースを使ったオリエンテーリング的自然観察会では, ネームプレート(約千枚)を付けた植栽樹木の中から,与えられたヒントをもとに正解の樹木を見つけ,そこで出題されるクイズに答えるもので,長年にわたって作られてきた植物データベースを活用して,キャンパスを植物図鑑のように見立てた活動であった。それに対して,クイズラリー・システムでは,キャンパス内に限定されない多様なフィールドを想定し,植物以外の情報も扱う。フィールドの解説を楽しみながら読む仕組みである。ガイドが同行して案内できることは望ましいが,引率できる人数には限度があるので,ガイドが案内できる以上の参加者に同時に案内する狙いがある。解説情報を,場所を増やしながら継続的に作っていくことで,地域を知るデータベースづくりにつながることも期待する。なお,このシステムでは,ラリーを円滑に進め,参加者の動向を遠隔から把握できるアプリを開発・利用する。今回は,それを試行的に行い,運用上の課題やき効果などを把握することを目指した。 ラリーは,参加者(班)ごとにアカウントを割り振り,チェックポイントを探しながらフィールドを歩き,チェックポイントでアプリを通じて解説を読み,クイズに答える。最後に参加者を集めて総括を行う。用意したのは,チェックポイント9箇所の解説(植生,地下水と地質,里山保全活動の3分野),図表や写真,詳しい解説(別サイト),クイズ,クイズの解説であった。この際,本部では参加者のチェック状況などをオンタイムで把握できる。</p><p> 今回は1つの試みにすぎないが,この応用可能性は高い。エコミュージアム活動のイベントで利用することや,博物館やインフォーメーションセンター等にスタートとゴールを設定できるならば,常設コース化もできる。例えば,歴史的街並みエリア(西条酒蔵地区や白市集落など)やまとまった自然エリア(オオサンショウウオの生息する椋梨川上流域,クロボヤ渓散策路など)での活用が考えられる。実施エリアを増やすことで地域内の解説情報が整理されて蓄積することが期待でき,イベントに使わない時は博物館のデジタルコンテンツとして公開できる。一般参加者を対象とするのではなく,小学校での総合学習としてカリキュラムに組み込むことや,中高生や大学生に問題を作成する側として参加(地域調査)させることも考えられる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581334683052800
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_74
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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