PTALを用いた公共交通への近接性研究

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タイトル別名
  • Accessibility studies for public transportation using PTAL
  • -Case study of The 23 wards of Tokyo in 2010-
  • -2010年における東京都23区を事例として-

抄録

<p>Ⅰ 本研究の目的</p><p> 日本の公共交通は,モータリゼーションの進展に伴う利用者の減少や市場原理を導入するための法令改正,コミュニティバスの導入による既存の公共交通との競合問題など,多くの問題を抱えている.しかし,公共交通を整備することにより,都市内の慢性的な渋滞の解消や近接性・社会的公平性の向上,温室効果ガスの削減などが期待されている.公共交通を充実させるためには,現在の公共交通の近接性を定量的に算出する必要があるが,公共交通への近接性を定量的かつミクロな空間スケールで分析することはデータの制約などにより限られている.</p><p> そこで本研究は,Public Transport Accessibility Levels(以下,PTAL)の手法を使用して2010年における東京都23区を事例に,公共交通への近接性を明らかにする.研究の分析単位は,境界などにより欠けていない250mメッシュ(8,934メッシュ)である.使用したデータは,国土基盤地図情報の建築物,国土数値情報の2010年バス停留所,2011年バスルート,オープンストリートマップの道路,交通新聞社の『東京時刻表2010年4月号』,総務省の2010年国勢調査(250mメッシュ)である.</p><p>Ⅱ PTALについて</p><p> 本研究で使用するPTALとは,イギリスのロンドン特別区の1つであるハマースミス・アンド・フラム特別区が1992年に開発し,2004年にロンドン特別区の公共交通を管理するロンドン交通局が公共交通へアクセスするための標準的な計算方法として採用し,対象地点から一定の範囲内にあるバス停・駅までの所要時間や路線ごとの平均待ち時間をもとに,対象地点における公共交通への近接性を定量的に評価する手法である.</p><p>Ⅲ 分析方法</p><p> 分析方法は,Transport for London(2010)に準じて一部の項目を変更して行った.分析の対象地点は,建築物の重心点の1,894,129地点である.対象となるバス停と駅は,建築物の重心点から道路距離でそれぞれ300m以内と500m以内とした.路線バスの運行本数は,現在得られるデータでは1日の運行本数であるため,複数の時刻表から判断した時間(6時~22時:17時間)で除して1時間の運行本数を算出した.鉄道の運行本数は,平日と土日祝の正午を中心とした前後2時間(10時~14時)を対象に路線の運行本数を抽出し,1時間当たりの本数を算出した.建築物の重心点ごとにPTALのもととなるAccess Index(以下,AI)を算出し,250mメッシュごとにAIの平均値を算出し,それらのAIをもとにPTALを算出した.</p><p>Ⅳ 研究結果</p><p> 東京都23区では,AIは駅や駅につながる道路が含まれるメッシュで高い値であり,河川や駅から離れたメッシュや23区の縁辺部では低い値のメッシュが多く分布していた.PTALは,駅やその周辺の限られたメッシュでは高いレベルで分布しているが,それ以外のメッシュのほとんどでは低いレベルとなっていた.これは,路線バスで運行時間が異なる路線もすべて同じ時間で1時間当たりの本数を算出していることが影響していると推察される.今後は東京都23区の実態に合わせた算出方法を考えて研究を進めていく必要がある.</p><p>参考文献</p><p>Transport for London 2010. Assessing transport connectivity in London. https://content.tfl.gov.uk/connectivity-assessment-guide.pdf (last accessed 13 January 2024).</p><p>謝辞</p><p> 本研究は,日本学術振興会特別研究員奨励費(課題番号:23KJ1986)の助成を受けた.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581334683058688
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_89
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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