3次元動作解析システムを用いたベッドからの起き上がり動作における関節運動の分析

DOI
  • 大谷 拓哉
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 三和 真人
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 堀本 佳誉
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科理学療法学専攻

抄録

<p>(緒言)</p><p> ベッドからの起き上がり動作はベッド上臥位から端座位へと姿勢を変換する動作であり,立ち上がりや歩行へと移行する際に経由する動作である.この動作に関する研究は動作パターンに着目した定性的なものが多く,定量的指標を用いた分析は十分とは言えない状況である.本研究では,ベッドからの起き上がり動作中の関節角度について,3次元動作解析システムとオイラー回転の手法を用いて計測・分析し,動作中の関節運動を明らかにすることを目的とした.</p><p>(研究方法)</p><p> 対象は健常若年男性7名(年齢:20.3±0.5歳,身長:172.4±3.6 cm,体重:61.4±4.5 kg.いずれも平均値±標準偏差)とした.起き上がり動作の開始姿勢はベッド上仰臥位とし,最終姿勢はベッド右側に両下腿をおろした端坐位姿勢とした.起き上がり方法や起き上がり速度は被験者が最も快適に感じるものとした.1回の練習の後,起き上がり動作を3回実施してもらった.</p><p> 起き上がり動作開始前に被験者身体の35箇所に赤外線反射マーカを貼付し,3次元動作解析システム(Mac3D)を用いて起き上がり動作中のマーカの空間座標を計測した.各被験者の動作時間を100%に正規化し,動作開始から動作時間5%ごとの関節角度を,マーカ空間座標データより算出した.関節角度算出のためのオイラー回転の回転順はX-Y-Zとした.各被験者の3回の試技の関節角度を平均し,その被験者の代表値とした.起き上がり動作時間(開始姿勢から最終姿勢までの時間)についても,各被験者3回の試技の平均値をその被験者の代表値とした.被験者7名の関節角度ならびに動作時間の平均値と標準偏差を算出した.</p><p>(結果)</p><p> 起き上がり動作時間の被験者7名の平均値は2.9±0.4秒(平均値±標準偏差)であった.</p><p> 頭頸部関節角度については,屈曲が動作開始30%の時点で最大値32.0°を示し,右回旋が50%の時点で最大値30.2°を示した.側屈については右側屈が0%,5%時点で最大値1.3°,左側屈が75%,80%時点で最大値7.2°を示した.体幹関節角度については,屈曲が動作開始60%の時点で最大値51.2°を示し,右回旋が50%の時点で最大値5.3°を示した.右側屈については,90%の時点で最大値7.5°を示した.左肩関節角度については,屈曲が動作開始45%の時点で最大値17.1°を示し,外転が85%の時点で最大値13.5°を示した.内旋については45%の時点で最大値23.9°を示した.右肩関節の屈伸運動については,動作開始40%の時点で最大伸展角度25.9°を示し,その後は屈曲運動に切り替わり,85%の時点で最大屈曲角度16.5°を示した.右肩関節の外転については,80%の時点で最大値27.0°を示した.右肩関節の内外旋については,40%の時点で最大外旋位19.3°を示したのち内旋運動に切り替わり,85%の時点で最大内旋位27.0°を示した.左肘関節の屈曲については動作開始時より屈曲運動を示し,動作開始30%時点で32.3°,50%時点で40.4°となり,90%時点で最大値52.5°を示した.右肘関節の屈曲については,動作開始40%の時点で最大値68.5°を示した.左股関節の屈曲については,動作開始20%付近から屈曲運動が生じ,40%時点で33.8°,60%時点で55.4°となり,100%時点で最大値62.4°を示した.右股関節の屈曲についても,左股関節とほぼ同様の動きを示した.</p><p>(考察)</p><p> 起き上がり動作における頭頸部の運動については,側屈の運動範囲が屈曲や回旋と比較し小さかったことから,屈曲ならびに回旋が主体であることが推察される.回旋については特に起き上がる側(すなわち下肢をベッド端から下ろす側.今回は右側)への回旋が生じることが推察される.体幹については側屈と回旋の運動範囲が小さく,屈曲運動が主体になると推察される.体幹には著明な回旋運動が生じない点が頭頸部の運動と異なる点である.肩関節の屈曲運動については左右で異なり,左肩関節は動作中盤まで屈曲運動を示すのに対し,右肩関節は動作中盤まで伸展運動を示した.左肩関節は重心の移動に寄与するための運動であり,右肩関節は右上肢をベッドについて支持するための運動となっていると考えられる.</p><p>(倫理規定)</p><p> 本研究は,千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会の承認を受け実施した(申請番号2022-07).</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581334683072768
  • DOI
    10.24624/cpu.15.1_1_52
  • ISSN
    24335533
    18849326
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ