障害のある子どもと遊びをめぐって : 乳幼児期の支援における「遊び」の位置づけの変遷

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  • Children with Disabilities and Play : Historical Shift About the Role of Play in EI/ECSE

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抄録

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[要約] 本稿は,乳幼児期の障害幼児への支援の文脈で,「遊び」がどのように位置づいてきたのかを,一部の文献等をもとに時代をさかのぼって,まとめたものである。子どもの発達と遊びとの関係をめぐっては,1980年代以降,遊びが様々な発達領域の影響を受けていること,発達を促す主要な舞台として遊びを利用できることが,障害児処遇の領域外で提案される。こうした方向性は,それまで乳幼児期の早期介入で主流であった大人主導の指導との対比の中で,遊びを活かした/遊びに基づく介入方法の提案を後押しすることとなった。一方,「子どもの主体的な遊び」と「大人の教育的・指導的な介入」という一見相反する行為を,矛盾なく成立させようとする過程においては,米国のたどった経緯に代表されるように,異なる価値観を有する専門領域間での衝突も有した。ただし1990年代以降,子ども自身の興味関心や動機づけを損なうことなく,生活の中に学習機会を埋め込む「自然主義的アプローチ」が導かれていく中で,PDCAサイクル上の工夫・配慮を含めた要点が明らかになっていく。2000年代以降,それまでの議論を発展させる形で,支援枠組みの洗練や実践者の理解を促すモデルの開発が,現在に至るまで続いている。世界的な情勢を踏まえた場合,我が国での「子どもの遊び」と「大人の指導」をめぐる議論は,長きにわたって平行線をたどったままの状況のように思える。これを解決するためには,他国と同様の経過をたどるべきなのか,それとも我が国特有のオルタナティブな解決方法があるのか,今後の動向を注視する必要性について述べた。

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