下顎智歯抜歯後の舌神経麻痺に対する治療の一例

DOI
  • 井村 紘子
    東京医科歯科大学病院歯科ペインクリニック
  • 山﨑 陽子
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯科麻酔・口腔顔面痛制御学分野
  • 坂元 麻弥
    東京医科歯科大学病院歯科ペインクリニック
  • 栗栖 諒子
    東京医科歯科大学病院歯科ペインクリニック
  • 川島 正人
    東京医科歯科大学病院歯科ペインクリニック
  • 前田 茂
    東京医科歯科大学病院歯科ペインクリニック 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯科麻酔・口腔顔面痛制御学分野

書誌事項

タイトル別名
  • A Case Report: Treatment for Lingual Nerve Paralysis Following a Mandibular Third Molar Extraction

抄録

症例の概要:患者は41歳の男性で,主訴は左側舌縁のピリピリ感と麻痺感であった.近医にて下顎左側智歯抜歯後,左側舌縁部の感覚がない状態が続いていた.メコバラミンを処方され内服したが症状の改善が見られないため,当科紹介され受診した.左側舌神経麻痺,左側舌神経ニューロパチーと診断された.メコバラミン,プレガバリンや桂枝加朮附湯の処方に加え,近赤外線療法,鍼通電療法を施行した.初診から1年5か月後には舌のピリピリ感,麻痺感は改善され,左側の味覚の改善が見られた. <br>考察:薬物療法,鍼通電療法,そして近赤外線療法が舌神経麻痺の回復に効果的であったと考えられる.薬物療法では神経障害性疼痛の第一選択薬としてのプレガバリンと漢方薬の桂枝加朮附湯の併用が有効で,桂枝加朮附湯はプレガバリンの副作用を軽減するのに役立ち,神経障害性疼痛の軽減に有用であったと考えられる. <br>鍼通電療法は痛みや知覚閾値,自覚的異常感の改善が得られるとされており,本症例では鍼刺激と通電刺激により,神経血流改善が得られ,末梢神経の再生力が高まったのではないかと考えられる.近赤外線療法は血液循環を改善し,神経の興奮性の鎮静効果が期待される.これらの治療法が本症例では舌神経麻痺の改善に有効であったと考えられる. <br>結論:舌神経麻痺の治療としては,薬物療法のみならず,物理療法も行い多角的にアプローチすることが有効である可能性が示唆された.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581401102964608
  • DOI
    10.11264/jjop.16.65
  • ISSN
    18829333
    1883308X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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