デジタル化と制度変化と政府の役割~取引費用経済学と新制度経済学からのアプローチ~

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タイトル別名
  • Digitalization, Institutional Change, and Government’s Role: Approaches from Transaction Cost Economics and New Institutional Economics

抄録

本稿では、情報通信技術の導入がデジタル・トランスフォーメーション(DX)を促すメカニズムを取引費用経済学と新制度経済学の枠組みに基づいて論考し、日本が直面する課題と政府の機能・役割について考察した。デジタル化は、安定していた「企業と市場の境界」に不均衡を生み出して組織運営の見直しを迫るとともに、「情報処理機構としての市場」と「制度としての市場」に非対称的な影響を及ぼすことで、様々な「制度改革」をも促す。公的部門は、自動車産業に匹敵する規模の商取引を行っており、政府のデジタル化では、組織運営の効率性を高めて行政サービスを充実させる側面にとどまらず、商取引を通じた民間部門への外部効果を視野に入れた取り組みが欠かせない。さらに、政府の重要な機能と役割として、個々の制度問題にも増して重視すべき真の課題は、技術変化に伴う制度変化への柔軟な対応力、すなわち「制度の形成能力」にあるといえる。技術変化が加速する環境下では、変化の「時間軸」がとりわけ重要であり、次々と生起する諸課題に迅速に対処し、新しい制度を練り上げていく「ソフトなインフラ」として、専門家の層を厚くする人材育成、その柔軟な移動と適切な配置、さらには専門人材を結集して叡智を活用するマネジメント能力が政府の DX でカギを握ると考えられる。

収録刊行物

  • 経済分析

    経済分析 209 (0), 132-154, 2024-03-29

    内閣府経済社会総合研究所

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581412164092032
  • DOI
    10.60294/keizaibunseki.209.0_132
  • ISSN
    27589900
    04534727
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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