ガス分子を利用したトリプルネガティブ乳がんの光免疫療法

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抄録

<p>免疫療法は,近年急速に発展しているがん治療法であり,大きな期待を集めている.しかしながら,エストロゲンおよびプロゲステロン受容体の発現およびヒト上皮成長因子受容体の過剰発現が見られず,免疫原性に乏しく“cold”ながん細胞であるトリプルネガティブ乳がん細胞(triple negative breast cancer: TNBC)には効果が低いことが課題となっている.また,光線力学療法(photodynamic therapy: PDT)や光温熱療法(photothermal therapy: PTT)はがん細胞の抗原提示細胞の成熟に関連していることが知られ,免疫療法を改善する手法として非常に有望であるが, やはりTNBCに対する効果は低く,これを打破する戦略が求められている.</p><p>本稿では,光免疫療法の効果を一酸化炭素(CO)と硫化水素(H2S)ガスによって増幅させ,効果的なTNBCの治療に成功した例を紹介する.COおよびH2Sは細胞内でミトコンドリア膜の脱分極などによって機能障害を誘発し,mitochondria DNA(mtDNA)の放出を促進する.これによって,免疫応答において重要なcGAS-STING(cyclic GMP-AMP synthase-stimulator of interferon genes)経路を活性化する.cGASは異物DNAを認識した後,STINGタンパク質を活性化させることで,インターフェロンや他の免疫関連サイトカインの産生を促進する.</p><p>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.</p><p>1) Riley R. S. et al., Nat. Rev. Drug Discov., 18, 175-196(2019).</p><p>2) Xie Z. et al., Chem. Soc. Rev., 49, 8065-8087(2020).</p><p>3) Wang K. et al., Nat. Commun., 14, 2950(2023).</p>

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 60 (5), 447-447, 2024

    公益社団法人 日本薬学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581468909405696
  • DOI
    10.14894/faruawpsj.60.5_447
  • ISSN
    21897026
    00148601
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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