高齢者施設における薬剤師介入による減薬効果

DOI
  • 松沼 悟
    東京医科大学八王子医療センター薬剤部

抄録

<p>ポリファーマシーとは,単に服用する薬剤数が多いことだけではなく,それに関連する薬物有害反応の発生リスクの増加や服薬過誤,服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態を指す.特に高齢者において大きな問題であり,「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(2018年5月,厚生労働省)によると,75歳以上の人口の約40%に5種類以上,約25%に7種類以上の薬剤が処方されている.さらに,6種類以上の薬剤の使用によって薬物有害反応が増加することが報告されている.</p><p>本稿では,豪州の高齢者施設における常勤薬剤師の配置による減薬効果に関するクラスターランダム化比較試験を紹介する.豪州ではResidential Medication Management Review(RMMR)という仕組みがあり,施設入所者に対して施設外の薬剤師が医師等の依頼を受け,面接や薬学的な臨床評価を不定期に実施している.本試験は,住宅型高齢者介護施設の入居者を対象とし,施設ごとに対照群または介入群のいずれかにランダムに割り当てられた.対照群では従来のRMMRが行われ,介入群では新たに雇用された薬剤師が週に2~2.5日勤務し,各入居者の薬剤管理のほか,カンファレンス参加,薬の相談応需,入居者・家族・スタッフの教育など医療チームにおける薬剤師として総合的に活動した.主要評価項目は,12か月後におけるAmerican Geriatrics Society BeersⓇ 2019 criteriaによって定義された潜在的に不適切な処方(Potentially Inappropriate Medications: PIMs)が含まれる割合の変化とされた.副次的評価項目は,Anticholinergic Cognitive Burden(ACB)スケールの平均値,併用薬剤数などであった.ACBスケールは抗コリン作用の強さを点数化したもので,認知機能障害がある場合は合計スコアを3未満に抑えることが推奨されている.</p><p>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.</p><p>1) Kojima T. et al., Geriatr. Gerontol. Int., 12, 761-762(2012).</p><p>2) Haider I. et al., Sci. Rep., 13, 15962(2023).</p><p>3) Boustani M. et al., Aging Health, 4, 311-320(2008).</p><p>4) the 2023 American Geriatrics Society Beers Criteria® Update Expert Panel., J. Am. Geriatr. Soc., 71, 2052-2081(2023).</p>

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 60 (5), 451-451, 2024

    公益社団法人 日本薬学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581468909406720
  • DOI
    10.14894/faruawpsj.60.5_451
  • ISSN
    21897026
    00148601
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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