ビジネス小説にみる金融のグローバル化と職業人の生き方 : プロジェクトファイナンスとヘッジファンド

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タイトル別名
  • Globalization in Financial Sectors and Career Development of the Bankers Depicted in Japanese Business Novels : Project Finance and Hedge Fund
  • ビジネス ショウセツ ニ ミル キンユウ ノ グローバルカ ト ショクギョウジン ノ イキカタ : プロジェクトファイナンス ト ヘッジファンド

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抄録

1980年代の金融の国際化と自由化は後半、空前の好景気、いわゆる「金余り」状態を経済界にもたらしたが、それをうけて1990年代はバブル崩壊、異常な円高へとつながり、実体経済のみならず、日本の金融機関に深刻なダメージを与えた。一方、この間、従来の日本の金融ビジネスでは従来、あまり注目されてこなかった新しい分野が手がけられるようになってきた。その代表的なものがプロジェクトファイナンスとヘッジファンドであろう。こうした新しい金融は欧米先進国だけでなく経済発展著しいアジアの金融市場でも行われるようになっていた。このような潮流にキャッチアップするために日本の銀行業界も自己改革を試みていく。 しかし、当時の日本の銀行の最大の課題はバブル崩壊後の不良債権処理であり、加えて従来の大蔵省(現財務省)の規制と指導によってまもられながら成長してきた市場のなかで昇進してきたトップ経営陣にはこの潮流に対する国際感覚が十分ではなかった。新しい金融の潮流に適応しようとした若い人材は主流派として銀行内では活躍できず、従来の国内的な発想との間で苦悩する。そうした人材を登場人物として1990年代の日本人金融マンの奮闘を描いたビジネス小説が黒木亮の「アジアの隼」、幸田真音の「小説ヘッジファンド」である。 作品では当時の日本を含めたアジアの金融界の変動を踏まえて、この時期の金融業界出身の二人の作家の目を通じて当時のグローバル化と自由化の中で日本の銀行マンが直面する困難と苦悩、そしてそれを突き抜けて生きようとする姿が描かれている。

収録刊行物

  • 社会科学年報

    社会科学年報 58 341-360, 2024-03-10

    専修大学社会科学研究所

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