明治・大正期の雑誌を資料とした「満ちる」「満たす」の格体制の調査 : 構成物を表す「~ヲ以テ」「~ニテ・~デ」「~ニ」の分布の異なり

書誌事項

タイトル別名
  • A Survey of the Case Patterns of "Michiru" and "Mitasu" Using Magazines in the Meiji and Taisho Periods : Focusing on the Distribution of Material Phrases "N-omotte", "N-nite / N-de" and "N-ni"
  • メイジ ・ タイショウキ ノ ザッシ オ シリョウ ト シタ 「 ミチル 」 「 ミタス 」 ノ カクタイセイ ノ チョウサ : コウセイブツ オ アラワス 「~オイテ 」 「~ニテ ・~デ 」 「~ニ 」 ノ ブンプ ノ コトナリ

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説明

現代語の「満ちる」「満たす」は、位置変化用法(e.g., グラスに水が満ちる)と状態変化用法(e.g., グラスが水で満ちる)を持つ。しかし、かつての日本語では状況が異なっており、少なくとも中世までは、基本的に位置変化用法しかないことを、川野 (2023) で指摘した。それでは、これらの動詞は、いつ頃、どのように、状態変化用法を獲得したのだろうか。この問題を明らかにするための基礎調査として、本稿では、明治・大正期の雑誌を調査し、当該動詞の状態変化用法の様相について、次のことを指摘した。 ①状態変化用法の文型として、(a) 構成物を「ニ」で表示する文型、(b)「ヲ以テ」で表示する文型、(c)「ニテ・デ」で表示する文型が確認できる。このうち (b) と (c) は、意味用法において同系列の文型と考えられ、調査資料の文体が文語体から口語体へ移行するのに伴い、(b) から (c) へと移行したと考えられる。 ②スペースが物理的に埋まることを表す場合は、文型 (b)(c) が用いられやすい。これに対し、「スペースが埋まる」という述べ方を通して比喩的に、対象が持つ感情や性質の程度の甚だしさを表す場合は、文型 (a) が用いられやすい。

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