妊娠32週未満のIUGR児における胎児アシドーシス評価
書誌事項
- タイトル別名
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- ―胎児心拍陣痛図,超音波所見,胎児血pHの関係および妊娠週数による信頼性についての検討―
説明
<p> 背景</p><p> 胎児心拍モニタリングを主体とした胎児well-beingの臨床的評価方法は,おおむね妊娠32週以降では確立されており,この時期の子宮内発育遅延(IUGR)児をはじめとするハイリスク児の管理は困難ではない。しかし,これらnear termの症例とは異なり,早期に指摘されたIUGR児に対しては,胎児心拍陣痛図や超音波血流計測による胎児アシドーシスの推定について限界があることが指摘されてきた1)。例えば,well-being fetusにおけるnon-stress test(NST)上の一過性頻脈や基線細変動は,妊娠32週未満では週数が若くなるほど出現率が低下するため,NSTのみの評価では胎児アシドーシス診断のsensitivityが低くfalse positiveが多くなるため信頼性に乏しい2)。このような時期のヒトIUGR児における胎児心拍陣痛図所見とwell-beingの関連については,なお未解決の問題であり,32週以降のnear term IUGR児についての議論をそのまま適応するのは妥当ではない。</p><p> 超音波ドプラ法を用いた臍帯動脈,臍帯静脈,中大脳動脈,下大静脈などの胎児血流計測とfetal well-beingとの関連についても,最近の諸研究によりある程度明確になってきた。パルスドプラ波形(FFTエンベロープ波形)のResistance index(RI), Pulsatility index(PI), Preload index(PLI)等のパラメータによる評価が行われるようになり,妊娠週数による各正常値も報告された3)。計測は容易になったものの,実際にこれをどのように臨床で運用するのかについては,検討が不足している。正常発育児も含めて(形態異常の児を除く),現在,コンセンサスを得つつある事象として,</p><p> ・胎盤機能低下に伴う慢性低酸素では,臍帯動脈RI, PIが正常例より上昇する4~6)。</p><p> ・臍帯動脈拡張期血流の途絶・逆流は低酸素/アシドーシスの存在を示唆する7, 8)。</p><p> ・臍帯動脈RI, PIの経時的上昇は,慢性低酸素/アシドーシスの進行を示唆する9, 10)。</p><p> ・中大脳動脈RI, PIは,慢性低酸素/アシドーシスによる血流再分配機構が作動している場合低下する11, 12)。</p><p> ・中大脳動脈RI, PIと臍帯動脈RI, PIの比は,血流再分配機構(いわゆるbrain-sparing effect)が作動している場合には低値となる13~16)。</p><p> ・慢性低酸素/アシドーシスでは下大静脈PLIの上昇,臍帯静脈や静脈管血流のpulsation増強がみられる17~19)。</p><p> などが挙げられる。ただし,これらは胎児アシドーシスの評価法に問題があったり,妊娠週数が考慮されていないなど,結局は今回問題とする32週未満では,娩出時期決定について実際には参考程度にしかならない。</p>
収録刊行物
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- 周産期学シンポジウム抄録集
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周産期学シンポジウム抄録集 22 (0), 109-119, 2004
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390582462816332544
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- ISSN
- 2759033X
- 13420526
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可