ミトコンドリア機能に着目した抗がん剤の心毒性評価
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- 近藤 萌
- 九州大学大学院医学研究院 病態修復内科学 九州大学薬学部薬学研究院 生理学分野
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- 中村 祐也
- 九州大学薬学部薬学研究院 生理学分野
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- 加藤 百合
- 九州大学薬学部薬学研究院 生理学分野
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- 深田 光敬
- 九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科
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- Xinya MI
- 九州大学薬学部薬学研究院 生理学分野
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- 伊藤 智哉
- 九州大学薬学部薬学研究院 生理学分野
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- 西村 明幸
- 自然科学研究機構生理学研究所(生命創成探究センター)心循環シグナル研究部門
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- 赤司 浩一
- 九州大学大学院医学研究院 病態修復内科学
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- 諫田 泰成
- 国立医薬品食品衛生研究所・薬理部
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- 西田 基宏
- 九州大学薬学部薬学研究院 生理学分野 自然科学研究機構生理学研究所(生命創成探究センター)心循環シグナル研究部門
書誌事項
- タイトル別名
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- Evaluation of Cardiotoxicity by Anticancer Drugs Focusing on Mitochondrial Function
説明
<p>全世界でがん患者数は年々増加している。一方で、がん患者の心血管疾患発症に関しては未だ不明な点が多い。オシメルチニブは上皮成長因子受容体(EGFR)変異陽性の非小細胞肺癌の治療に用いられ、予後を大幅に改善する。しかし、治療中に1〜5%の割合で心不全、10%でQT延長が認められ、一部の症例では致死的経過を辿るが、オシメルチニブによる心毒性メカニズムについては、解明されていない。</p><p>拍動にエネルギーを必要とする心筋組織は、ミトコンドリアが30%も占めているといわれている。本研究では、ヒトiPS由来心筋細胞(hiPSC-CMs)のミトコンドリアに着目し、オシメルチニブの心毒性メカニズムを解析した。</p><p>hiPSC-CMsに抗がん剤(オシメルチニブ、ドキソルビシン、トラスツズマブ)を曝露すると、ミトコンドリアの過剰分裂が誘導され、呼吸能も抑制された。当研究室ではこれまで心筋細胞におけるミトコンドリア品質維持に硫黄代謝が重要な役割を果たすことを見いだしている。硫黄分子ドナー(Na2S、Na2S2、Na2S3)を添加すると、Na2Sがオシメルチニブによるミトコンドリア機能障害を最も強く抑制した。硫黄分子検出プローブを用いた細胞内イメージングの結果、オシメルチニブは細胞内H2S濃度を低下させ、その低下がNa2S曝露により回復することがわかった。</p><p>以上より、オシメルチニブは心筋のミトコンドリア機能障害と同時に細胞内H2S量を低下させることが明らかとなった。また、細胞内H2S濃度の維持がオシメルチニブ心毒性の緩和に寄与する可能性が示された。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 51.1 (0), P-139-, 2024
日本毒性学会