オキサリプラチン誘発末梢神経障害の回避のためのドラッグリポジショニング研究
書誌事項
- タイトル別名
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- Drug repositioning studies to prevent oxaliplatin-induced peripheral neuropathy
説明
<p> 白金系抗がん薬であるオキサリプラチンは、大腸がん、胃がん、膵がんなどの標準治療において重要な薬剤である一方で、高頻度で末梢神経障害を引き起こす。オキサリプラチンの末梢神経障害は低温知覚異常の症状を示す急性神経障害としびれ、疼痛、感覚異常などの慢性神経障害に大別される。これらの神経障害は、QOLに影響を及ぼし、薬剤の減量や投与中止につながるため、解決すべき課題である。しかし、ASCO、ESMO、日本がんサポーティブケア学会などの国内外のガイドラインにおいて、末梢神経障害に強く推奨される予防薬・治療薬はない。</p><p> 我々は、基礎研究においてオキサリプラチンの急性神経障害および慢性神経障害の発現メカニズムの解明を行ってきた。さらに、そのメカニズムを標的として、基礎研究、副作用データベース解析研究、臨床研究において、既承認薬の中から複数の予防薬および治療薬の可能性を見出している。特に、近年では、胃酸分泌抑制薬のプロトンポンプ阻害薬がオキサリプラチンの末梢神経障害の予防薬となる可能性を明らかとした。ラットにおいて、プロトンポンプ阻害薬オメプラゾールは、オキサリプラチン投与によって起こる神経障害性疼痛および末梢神経の変性を予防した。また、副作用データベースであるFAERSの解析において、プロトンポンプ阻害薬を併用している患者レポートでは末梢神経障害の報告率が低かった。さらに、九州大学病院でオキサリプラチンの治療を開始した患者1,038名を対象とした過去起点コホート研究において、プロトンポンプ阻害薬の併用群では非併用群に比較して末梢神経障害の発現(any Grade)および末梢神経障害による治療の中断が有意に少なかった。</p><p> 本シンポジウムでは、これらのドラッグリポジショニング研究のこれまでの成果と今後の発展性について紹介を行う。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 51.1 (0), S34-2-, 2024
日本毒性学会