大型囲いワナが生み出す人間-サルの情動的交渉
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- 合原 織部
- 京都大学
書誌事項
- タイトル別名
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- How Has the Large Enclosure Trap Created the Affectional Relations between Humans and Monkeys?
- An Examination of the Development and Use of a Captive Device
- サル捕獲機具の開発と利用をめぐる考察
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説明
<p>本論は、2014年に新たな猿害対策として宮崎県椎葉村に大型囲いワナが導入された状況に着目し、研究機関で開発された捕獲機具としての大型囲いワナが、ある特定の社会文化的文脈で利用される過程を考察する。それにより、日本の猿害対策を扱った先行研究にみられる、対策機具・技術の開発を目的とした対策論的研究と、猿害地域の対策実践や被害認識を解明してきた社会科学的研究を二分するアプローチでは検討されてこなかった両者の関連性に着目する。</p> <p>大型囲いワナは、研究機関「モンキーセンター」により、霊長類学の観点からサルの群れを効率的に捕獲するために開発され、全国の猿害地域へと広められた。他方で、椎葉村ではサルと人々の交渉が生じていることや、サルの祟りが伝承されていることから、農家は大型囲いワナの管理を積極的に行わず、猟師はサルの処分を拒む様子が明らかになった。研究機関で効率性を追求して開発された大型囲いワナは、当地域では作動しないのみでなく、サルの祟りがより強く意識される契機となっていた。</p> <p>本論では初期のアクターネットワーク理論の視座に依拠し、大型囲いワナが、研究機関から地域社会へと移動した際にいかに機能するかを検討する。ただし、従来の研究は、技術の移転や失敗をめぐってネットワークが利害関係を中心に形成される過程に着目してきた。他方で、本論では、大型囲いワナの機能性は、利益を追求するアクター間の戦略に還元して捉えることはできず、諸アクターの交渉によって生成する怒りや恐れといった感情経験によって方向づけられる過程を描きだす。そのことで、先行研究では取り上げられることのなかった、感情や心的状態といった要素を軸としてネットワークが形成/崩壊する様態を明らかにする。</p>
収録刊行物
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- 文化人類学
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文化人類学 89 (1), 005-021, 2024-06-30
日本文化人類学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390582960414158336
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- ISSN
- 24240516
- 13490648
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可