鹿児島市における直近十年での桜島火山対策の検証の試み
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- 岩船 昌起
- 鹿児島大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Attempt to verify Sakurajima volcano countermeasures in Kagoshima City for the last decade
- Understanding the actual situation of Sakurajima residents and utilizing it for disaster prevention measures
- 桜島住民の実態の把握と防災対策へのその活用
説明
<p>【はじめに】本発表では,ここ十年程度における鹿児島市での桜島火山防災対策・施策を概観し,桜島住民の実態把握について,若干考察する。</p><p>【桜島火山爆発総合防災訓練】1971年1月12日に1回目が行われた(桜島町 1950, 1988)。2024年度で55回目となる。訓練日は,大正噴火発生日に因んで,1月12日(途中から前後の土日)であった。しかし,2020年度の51回目から,11月開催「住民避難訓練」と1月開催「避難所運営訓練・展示訓練」に分かれて,年2回開催となった。</p><p> 鹿児島市は「桜島火山爆発総合防災訓練」参加者にアンケートを行い,訓練の改善や桜島火山防災対策立案の根拠資料として活用している。ただし,訓練参加者は,概ね区長等による「動員」で集まるため,防災も含めて,意識が高い住民が多い。特に,避難行動要支援者と家族等の参加が少なく,「健常な歩ける人」の集計結果と考えるべきであろう。</p><p>【火山防災トップシティ】鹿児島市では,2019年から「鹿児島市火山防災トップシティ」を推進している(鹿児島市 2019)。①「大規模噴火でも『犠牲者ゼロ』を目指す防災対策」,②「次世代に『つなぐ』火山防災教育」,③「『鹿児島モデル』による世界貢献」を設定し,桜島火山防災に係る各種施策に取り組んでいる。①防災対策に「桜島火山爆発総合防災訓練」が位置づけられており,市考案の防災対策を桜島住民に周知する機能が期待されている。</p><p> 策定当初の「鹿児島市火山防災トップシティ構想検討委員会」には,大学研究者等の防災専門家5人,NPO法人関係者等の地域有識者4人の計9委員がいるものの,桜島出身者の住民を確認できない。</p><p>【セーフコミュニティ】「統計データ等の分析に基づき,事故やけがの原因を調べて対策を講じて予防する取り組み」である。WHO(世界保健機構)が推奨し,国際認証制度がある。鹿児島市では、2013年に認証取得を目指し,2016年認証取得し,2021年再認証取得している。①交通安全,②学校の安全,③子どもの安全,④高齢者の安全,⑤DV防止,⑥自殺予防,⑦防災・災害対策の重点7分野がある。</p><p> ⑦防災・災害対策では,「桜島地域における避難体制の再構築」が目標である。防災・災害対策委員会構成員は,町内会関係者7人,地元消防団2人,学識経験者2人,気象台,自衛隊,海保,警察4人,行政機関7人であり,避難行動の主体である桜島住民が中心である。</p><p>【セーフコミュニティでの調査方法】令和4年度には,市内居住の市民6,100人を無作為に抽出して質問紙を郵送し,郵送またはインターネットで回答が回収された(鹿児島市 2023)。有効回答数〔率〕は,市民3,297人〔54.0 %〕である。</p><p> ⑦防災・災害対策では,全市域でなく桜島地域が対象となるために,有効回答数が著しく減少する(鹿児島市 2024)。例えば,「住民の事前避難意向」では2022年〔n = 121〕,2019年〔n = 139人〕,2013年〔n = 439人〕である。また,母数が少ないことに起因してか,得られた割合も年度ごとに傾向が異なる。例えば,「高齢者自力避難の可否」では2022年「できる78. 5%,できない20.0 %」〔n = 65〕,2019年 「53.8 %,32.7 %」〔n = 52人〕,2013年「72.2 %,20.0 %」〔n = 245人〕である。</p><p>【鹿大学生調査】鹿児島大学では、共通教育科目「防災フィールドワーク」受講生を中心に、2018年度から33班118名が33題の研究が行われてきた。「桜島火山爆発総合防災訓練_展示訓練」に参加し、29題の研究発表も行ってきた。演題中の単語の出現頻度は,桜島24,意識19,避難17,噴火11,防災6,調査6,火山5,情報5,住民5,町5,バス3,校区3,地区2,島民2の順である。桜島の地域コミュニティのご協力を頂きながら,集落(人口50~400人)単位でフィールドワークを行い、聞き取りやアンケートで桜島島民の回答〔n = 10 ~ 100 人〕を頂き,桜島島民の「桜島火山防災」に係る実態解明を試みている。 2021年度の一つでは,鹿児島市が2016年度に行った桜島全世帯対象調査の回答について,住民35名中5人(14%)が「内容が変わった」との結果も得られている。</p><p>【考察】『犠牲者ゼロ』を達成するには,桜島住民の実態把握が重要である。立案すべき防災対策も,実際に避難する桜島住民等の実態によって異なるはずである。近年では,地区防災計画や個別避難計画の作成が推奨され,避難主体であるコミュニティや個人を重視する傾向が強まっている。「鹿大学生調査」は,コミュニティと個人を重視したものであり,これらの結果からも,桜島全世帯での実態調査が十宇年以内の短い周期で実施されるべきであろう。</p>
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2024a (0), 182-, 2024
公益社団法人 日本地理学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390583159491629824
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可