地域在住高齢者における生きがい感が社会的フレイル評価に有効か
書誌事項
- タイトル別名
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- ー社会的心理側面からの検証ー
説明
<p>【目的】 昨今、高齢者が健やかな生活を送る上で運動機能向上と合わせて、心理社会的側面の充実感も重要な要因であると考えられている。要因の一つである生きがい感は様々な概念を包括しており、定義化についてこれまでの科学的根拠を整理した研究はほとんどなく、社会的フレイル因子の具体的な関連性について述べられた記述も少ない。本研究では九州大学と共同研究を行い、生きがい感評価で対象者を2群 (生きがい高い群・その他群)に区別した後、社会的フレイルインデックスおよびE-SASの構成因子と比較することで、心理社会的側面の現状把握と今後の活動低下要因の予後予測として妥当であるかを検証した。 【方法】 糸島市在住の65歳以上高齢者で、令和5年度に九州大学が主催しているフレイル予防教室に参加した68名(男性18名、女性50名)に実施した。生きがい感評価として高齢者向け生きがい感スケールにて、28点をカットオフ値として2群 (生きがい感高い群・その他群)に区別後、分析対象者の基本属性、社会的フレイルインデックス、E-SASにて、2群間の測定項目において生きがい感が社会的フレイル要因として有用であるかをt検定およびMann-Whitney U検定を用いて検証した。統計解析は、Windows版Free JSTATを使用し、有意水準は5%とした。 【結果】 分析対象者の基本的属性の比較について、性別で女性は男性と比べて生きがい感の得点が有意に高かった (p=0.01)。地域活動は生きがい感高い群で活動傾向であり (p=0.01)、薬受け取りはその他群で有意差を認めた (p=0.01)。社会的フレイルインデックスでは、生きがい感高い群で近所との関わりに関心が高く (p=0.01)、社会的フレイル判定で有意差を認めた (p=0.01)。E-SASの6項目では、社会心理的評価である人とのつながりについて生きがい感高い群の得点が高く、有意差を認めた (p=0.01)。 【考察】 生きがい感の高さが社会的フレイルの除外因子として妥当であるかを検討することは、地域高齢者の社会参加特性を理解する上で重要であると考えた。本研究において、生きがい感が高い男女共通して、その他群と比較し、地域コミュニティーを確立しやすい傾向が示唆され、地域との関わりが他者との相互関係を育み、高齢期における自律した生活環境の維持や人との良好な関わり、または協調性を獲得することが可能であると考える。生きがい感に着目することは高齢期特有の活動低下因子を運動機能以外からも簡易的に検討することが可能であると考える。本研究の対象集団は、継続的な運動を行っているため自立した生活環境の中で過ごしている。その中で、社会的フレイルから身体的フレイル要因の関連性を考慮することで、本研究で明らかにした生きがい感その他群における、他者との関わりや人とのつながり低下が認めた個人について、将来の身体機能低下要因を予測していく上で、生きがい感評価は簡易的な社会的フレイル評価として検討できる可能性が示唆された。高齢者個人の日常生活活動維持におけるアプローチ検討の一助として、生きがい感評価は有効な手段になり得るのではないかと考える。 【結論】 生きがい感評価を行うことで、社会的フレイル要因である他者との関わり程度や人とのつながりについて評価でき、身体活動低下に関する簡易的な予後予測が行える可能性が示唆された。 【倫理的配慮】本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認 (22-Ifh-056)後、対象者に書面及び口頭にて十分な説明を行い、同意を得た上で実施した。本研究における開示すべき利益相反</p>
収録刊行物
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- 九州理学療法士学術大会誌
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九州理学療法士学術大会誌 2024 (0), 313-, 2024
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390584807331598592
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- ISSN
- 24343889
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可