Coastal seafloor research after the 2024 Noto Peninsula Earthquake

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Other Title
  • 2024年能登半島地震後の沿岸浅海底調査
  • 地形・地質調査の空白域に挑む
  • Challenging the bathymetric and geological survey blank areas

Description

<p>1.はじめに</p><p> 沿岸浅海域は陸上地質と海域地質をつなぐ重要な地域であるが、大型調査船が近づけない沿岸浅海域は地形・地質調査の空白域として残されたままである。能登半島では東部で沿岸から5~7km、七尾湾では湾奥部から20kmの空白域が存在する。一方、能登半島北岸では半島北西岸沖を震源域とした平成19年能登半島地震(2007年3月25日,M 6.9)の発生後、沿岸近くまで及ぶ詳細な海底地質調査が実施された(井上・岡村,2010)。しかし、沿岸近くの探査は難しく、海岸から1~2.5kmの幅で空白域が残る。</p><p> 岩石海岸に接する浅海域では、侵食営力が作用して岩盤が露出する侵食地形であることが多い(たとえば,菅ほか2023)。海域の地質調査は通常、音波探査と堆積物等の試料採取(ドレッジおよびコア試料採取)によるため、岩盤が露出した海底は音波探査による地層の判別が難しい。中新世堆積岩類(南志見沖層群)と音響基盤との境界は海底地形の起伏を基に推定されており、音響基盤は主に火成岩類よりなると推定されている。輪島の北21~23kmに位置する七ツ島周辺にも空白域が存在するほか、周辺の地質は「音響基盤」である。輪島と七ツ島の間,距離にして23kmのうち、堆積物が堆積する(すなわち、海洋地質が記載される)海域は約4割程度である。</p><p></p><p>2.沿岸浅海域のマルチビーム測深と潜水地質調査</p><p> 我々は2024年4~5月に能登半島北岸の約42㎢でマルチビーム測深機R2Sonic2022を用いた海底地形測量を実施し、0.5mおよび1mグリッドの高解像度海底地形図を作成した(例 https://isgs.kyushu-u.ac.jp/~seafloor/noto/)。その後、同年6月と8~9月に測深海域で28回の潜水調査を実施した。また、水中ドローンを用いた観察も21カ所で実施した。狙いを定めたポイントへ潜行する潜水調査やROV調査には、高解像度マルチビーム測深データは必須である。</p><p> 本研究では沿岸浅海域の地形・地質に関して多くの新たな知見を得た。輪島北西沖にはWSW-ENE方向に約4km延びる直線的な高まりが存在し、数値地質図S-1にて主に火成岩類よりなると推定される「音響基盤」と記載されるが、潜水して岩石を採取したところ、この高まりは原地性のサンゴモ(石灰藻)を主とする石灰岩よりなることが判った。また、その南側、海岸との間(幅約1.5km)は珪質シルト岩よりなるが、石灰質のマトリクスを含む珪質シルト岩や珪藻質の珪質シルト岩などいくつかの岩相が認められる。このほかにも、新たに得られた知見について発表時に紹介する。</p><p></p><p>3.浅海底の地形地質調査法について</p><p> 岩盤が露出している沿岸浅海域の調査手法については、今後議論を行い、可能な方法を探ることが必要である。既存の地形図や地質図がない沿岸浅海域では、それらの作成から研究を始める必要がある。水中ではGPSが使用できず、見通しは透明度によるが、数cm~十数mである。また、減圧症等の潜水病を避けるため、深度によって潜水時間が限られている(目安として水深20mで約20分、水深30mで約10分を1日1~2回)。海況不良で調査ができない時も多い上、船舶借上や安全対策などにコストがかかるなど、陸上の調査と同様に進められないのが課題である。</p><p> 堆積物に覆われた海底ではマルチビーム測深による高解像度海底地形情報を基にした海底地形の判読と、地層探査による情報をあわせて地形・地質情報を整備し、活断層等の存在を解釈することが望まれる。</p><p></p><p>謝辞:能登半島沿岸域の調査は株式会社ワールドスキャンプロジェクト(WSP)の資金援助によって実現しました。旅費の一部には九州大学総長裁量経費(代表者 ハザリカ・へマンタ教授)を受け,潜水調査はR3~6年度科研費JP21H04379(代表者:菅 浩伸)を用いて実施しました。現地調査にご協力いただいた石川県漁業協同組合の若松拓海様,石川県漁業協同組合輪島支所統括参事の上濱敏彦様,凪紗丸船長の岩坂紀明様,まる丸船長の塩谷雅孝様,わじま海藻ラボの石川竜子様はじめ,輪島市民の方々に感謝申し上げます。</p><p></p><p>1) 井上卓彦, 岡村行信 (2010) 数値地質図S-1, 地質調査総合センター. </p><p>2) 菅 浩伸ほか(2022)玄武岩海食崖沖の海食台. 地形,42(3), 69-81.</p>

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