スリランカにおける100年データを用いた降水特性の変化

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  • Change of rainfall characteristics in Sri Lanka using 100-years record

抄録

<p>アジアモンスーンは、明瞭な季節風と乾季・雨季を持つ降水特性を特徴とする。雨季の多量の雨は、農業の恵みとなる一方、極端な洪水や干ばつは人命や資産の損失をもたらす。産業革命以降の気候変動による極端な降水現象の変化は、人間活動に直接影響する。南アジアで総じて言えるが、近年の人口増加と経済発展が著しく、モンスーン変動の影響が顕著で、脆弱性も高い。Germanwatch (2017)は1997~2016年の気候リスクを国別に指標化し、モンスーンアジア域の多くの国がTop20に入っている。Jayawardene et al. (2005)では月降水量ではあるが100年以上のデータを用いたトレンド解析を実施し、Alahacoonet al. (2018)では21世紀以降の日降水量データを用いたトレンド解析を実施したが、気候変動の影響、特に農業分野における影響を議論するには、日降水量での解析と解析期間の延長が必要である。</p><p>そこで本研究では、デジタル化されていないスリランカにおける旧英領時代を含む日降水量のデータレスキューを実施し、まず1917~2016年のデータを用いたスリランカ全体の降水特性の変化を明らかにする。</p><p>対象領域は、現在のスリランカの領土とし、現在の観測地点と連結可能な21地点のデータを用いた。19世紀は観測点が少ないため、一部の地点では1868年からデータがあるが、今回は使用していない。データの均質性を4つの統計テスト(Wijingaar et al., 2003)を実施し、最終的に13地点を以降の解析に用いた。</p><p>Endo et al. (2015)に倣い、年降水量(PRCPTOT)、日降水強度(SDII)、年間最大日降水量(RX1day)、年間最大5日間降水量(RX5day)、日降水量95パーセンタイル値(R95%)、日降水量99パーセンタイル値(R99%)、連続無降水日数(CDD)、連続降水日数(CWD)、日降水量10mm以上の日数(R10mm)、日降水量20㎜以上の日数(R20mm)、日降水量50㎜以上の日数(R50mm)、日降水量1~3㎜の日数(R03mm)、年間降水日数(WDAY)の13個の指標について計算した。トレンド解析ではMann-Kendallテストを用いて評価した。</p><p>本研究の初期結果によれば、年を通じて強雨の日数と強度は増加し、弱雨は若干減少傾向である。また季節ごとに見ると、プレモンスーン期(3~5月)には降水日数や弱雨の減少に伴う総量の減少が見られる。一方、モンスーン期(6~9月)には降水日数や弱雨が減少傾向である。このような季節による様々な指標の変化は、特に農事暦などに影響する指標については重要と言える。</p><p>本研究ではデータレスキュー活動を通じた100年間のスリランカにおける降水特性を解析した。本稿では初期解析の結果のみを示したが、今後、1)スリランカが北東モンスーンの影響を受けている地域と分けた解析と、2)20世紀再解析データ等を用いた、その背景要因を明らかにする解析を実施予定であり、その成果を当日に紹介する予定である。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845702282611072
  • NII論文ID
    130007710966
  • DOI
    10.14866/ajg.2019a.0_142
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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