核移植における体細胞核の全能性獲得に関与する遺伝子の探索

書誌事項

タイトル別名
  • Screening and functional analysis of genes responsible for acquiring totipotency in somatic cell nuclear transfer embryos

説明

<p>雌性生殖細胞である卵子は精子と受精することにより分化全能性を獲得する。一方,除核した卵子に体細胞核を移植すると,体細胞核が卵子内因子の働きにより初期化され核移植胚が発生を開始する。しかし,体細胞核移植胚の発生率は依然として低い。また,核移植胚の低発生率に関与する特定の遺伝子は明らかになっていない。我々の研究グループは近年,マウス核移植胚をTricostatin A(TSA)で処理後に連続してVitamin C(VC)添加培地で一定時間培養することで,TSA単独の発生率よりも4倍近く高い発生能を示し,約15%の核移植胚が産仔にまで発生することを発見した。そこで本研究では,核移植胚の発生率が大幅に向上する条件下で発現変動を示す遺伝子群に着目し,核移植胚の発生に関与する特定の遺伝子の同定を目指す。まず,RNAシークエンシングを用いてTSAとVCで処理した核移植胚と通常核移植胚のトランスクリプトームを比較し,2細胞期胚において通常核移植胚より発現が上昇している遺伝子141個を同定した。それら141個の遺伝子の内,受精卵と比較して通常の核移植胚で発現の低下する遺伝子を16個にまで絞り込んだ。これらの遺伝子は,核移植胚の発生率が向上した際に発現上昇するが,通常の核移植胚では受精卵と比較して発現抑制されている。同定した16個の遺伝子の胚発生における役割を調べるため,マウス受精卵へsiRNAインジェクションを行い,各遺伝子を発現抑制して胚盤胞期胚までの発生率への影響を調べた。その結果,16個の候補遺伝子のうち2つの遺伝子で,siRNAインジェクションにより胚盤胞期までの発生率が有意に低下した。この2つの遺伝子はいずれも核内因子であり,初期胚の核内での局在を確認している。今後,本実験で同定した遺伝子が体細胞核移植胚の全能性獲得に関与しているか調べるために,機能解析を進めていく。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845702291017344
  • NII論文ID
    130007719383
  • DOI
    10.14882/jrds.112.0_p-98
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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