日本語学習者の使役移動表現―INTO経路概念表出における中間言語的特徴―

DOI Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • A Contrastive Interlanguage Analysis of Caused Motion Expressions: How do Japanese Learners Express INTO-Path?
  • ニホンゴ ガクシュウシャ ノ シエキ イドウ ヒョウゲン : INTO ケイロ ガイネン ヒョウシュツ ニ オケル チュウカン ゲンゴテキ トクチョウ

この論文をさがす

抄録

<p>本研究は,日本語学習者が使役移動事象について日本語でどのように表現するのかを,日本語母語話者の表現と比較するだけでなく,英語,ハンガリー語,中国語,イタリア語を母語とする日本語学習者間でも比較することにより,学習者共通の特徴に注目した中間言語の実態解明を試みるものである.52の移動事象のビデオ映像を提示し,描写させる言語実験で得られたデータのうち,INTO経路を含む3種類の使役移動事象(随伴運搬 (CARRY),開始時起動 (KICK),継続操作 (PUT))場面の言語表現を取り上げ,分析した.その結果,日本語母語話者ではほぼ必ずINTO経路が表出(93.9%)されているのに対し,学習者言語ではどの学習者グループでもINTO経路の表出が半数程度(平均55.1%)であることがわかった.他の経路と比較してINTO経路は,母語ではどの言語の話者も表出頻度が高いことから,INTO経路表出の少なさは学習者言語の特徴だと言える.これは主体移動事象の描写においてINTO経路が表出されにくいという指摘(吉成ほか,2016)に沿うものである.また各使役移動場面の表現方法を比較したところ,学習者言語では共通してINTO経路を表す動詞「入れる」の単純動詞としての使用は見られたものの,日本語母語話者の表現で頻出する「蹴り入れる」のような複合動詞での使用はほとんど見られなかった.以上の結果から,学習者のINTO経路表出の少なさの要因として,目標言語と母語との表現パターンの相違,そして目標言語である日本語の経路表出方法の複雑さがあることを明らかにした.</p>

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ