紅茶ポリフェノール生成におけるピロガロール型カテキンの酸化的二量化機構

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タイトル別名
  • Oxidative Dimerization Mechanism of Pyrogallol-type Catechins on the Production of Black Tea Polyphenols

抄録

<p>【序論】</p><p>紅茶は世界中で広く飲まれている嗜好飲料であり、ポリフェノールを豊富に含む。茶葉 (Camellia sinensis) 中にはepigallocatechin (1) やepigallocatechin-3-O-gallate (2) などのカテキン類が豊富に含まれるが、紅茶製造過程において茶葉が揉捻されるとポリフェノールオキシダーゼやペルオキシダーゼなどの酸化酵素が働くため、含有成分が大きく変化する。その過程で茶葉中のカテキン類が酸化され、テアフラビン類・テアシネンシン類・テアシトリン類などのさまざまなカテキン二量体が生成する1。茶葉に最も多く含まれるカテキン類である2は、ポリフェノールオキシダーゼによって酸化を受けるとdehydrotheasinensin A (3), theacitrin C (4), EGCg quinone dimer A (5), EGCg quinone dimer B (6) などの二量体へと変化する (Scheme 1)2。今回、2の酵素酸化反応について経時変化を詳細に調べた結果、酸化反応初期にのみ検出される未知の生成物7を見出した (Fig. 1)。そこで、7の化学構造と反応性を解明するとともに、カテキン酸化における意義付けを行った。さらに、立体配置が未だ明らかとなっていない4について、計算化学的手法により検討を行った。</p><p> </p><p>Scheme 1. Epigallocatechin-3-O-gallate (2) の酵素酸化反応</p><p>【ピロガロール型カテキンの酸化反応初期に生成する不安定二量体】</p><p>Epigallocatechin-3-O-gallate (2) をポリフェノールオキシダーゼで10分間処理後、生成物を分離・精製した結果、3–6とともに新規二量体7が得られた。化合物7の</p><p> Figure 1. Epigallocatechin-3-O-gallate (2) のポリフェ</p><p>ノールオキシダーゼ処理後のHPLCクロマトグラム</p><p>構造は各種スペクトルデータに基づいて決定された。化合物7は水中で不安定であり、容易に分解して2および4–6が生成した (Scheme 2)。化合物2の酵素酸化反応の初期において、2のo-quinone体を経て二量化が起こり3および7が生成するが、7は不安定なため徐々に分解し、比較的安定な4–6へ変化すると考えられる。本研究室では以前、2を30% aq. MeOH中においてCuCl2酸化することにより3のみを選択的に合成できることを報告している3。今回、2をCH3CN中において3,5-di-tert-butyl-1,2-benzoquinoneで酸化することにより、7のみを選択的に合成できることを見出した (Scheme 3)。Epigallocatechin (1) についても同様に3,5-di-tert-butyl-1,2-benzoquinoneを用いて酸化したところ、7のデスガロイル体8が得られた。そこで、8の水中における分解反応についても検討した結果、EGC quinone dimer A (9)4、10、およびproepitheaflagallin B (11)5が生成することが明らかとなった (Scheme 2)。化合物7および8の分解生成物に違いが見られたことから、その分解反応においてガロイル基の有無が影響すると考えられた。</p><p>Scheme 2. 不安定中間体7 (R = G) および8 (R = H) の水中における分</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845702294192896
  • NII論文ID
    130007722924
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.58.0_poster20
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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