〈国民〉から〈民衆〉へ

書誌事項

タイトル別名
  • From “Citizens” to “Crowd”: The Depiction of Post Russo-Japanese War Space in Nagai Kafū's <i>Chichi no On</i>
  • 〈国民〉から〈民衆〉ヘ : 永井荷風「父の恩」の日露戦後空間
  • 〈 コクミン 〉 カラ 〈 ミンシュウ 〉 ヘ : ナガイ カフウ 「 チチ ノ オン 」 ノ ニチロセンゴ クウカン
  • ――永井荷風「父の恩」の日露戦後空間――

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説明

<p>永井荷風「父の恩」は一九一三年に発表され、中絶を経て一九一九年に続稿が公にされた小説である。本稿は大正期の都市騒乱という観点から作品の成立過程を跡づけ、日比谷焼打ち事件の描写等により仮構された日露戦後空間と続稿発表時の時代状況が〈民衆〉というモチーフにより横断的に関連づけられる作品構造を鮮明にした。また、作中に言及されるヴェルハーレンや裸体画の分析を通じ、日露戦後的な〈国民〉と、新たな時代精神としての〈民衆〉の差異を浮き彫りにするテクストとして意味づけた。この作品は、大正の世において時代の本質を見定めようとする関心と隠逸への意志との間で揺れる荷風の葛藤を反映しており、大正中期以降に顕著となる隠遁的作家像から逸脱する可能性を持つものとして位置づけることができる。</p>

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