心不全治療に難渋した野生型ATTR心アミロイドーシスの1剖検例

DOI
  • 井上 美奈子
    製鉄記念八幡病院 循環器・高血圧内科 九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学
  • 古賀 徳之
    製鉄記念八幡病院 循環器・高血圧内科
  • 樋口 優
    製鉄記念八幡病院 循環器・高血圧内科
  • 金城 満
    製鉄記念八幡病院 病理診断科
  • 土橋 卓也
    製鉄記念八幡病院 循環器・高血圧内科

書誌事項

タイトル別名
  • Refractory heart failure caused by wild-type ATTR amyloidosis:An autopsy case

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抄録

<p> 症例は79歳,男性.73歳時に心肥大を伴う心不全を発症した.心肥大は徐々に進行し,心房粗動や非持続性心室頻拍などの不整脈が出現,心不全は次第に治療抵抗性となった.心アミロイドーシスを疑い十二指腸生検を施行したが,アミロイド沈着は認めなかった.79歳時,再度心不全が増悪し,漏出性胸水貯留に加え,大量の滲出性心嚢液貯留を繰り返すようになった.心膜炎を疑い薬物療法を行うも奏効せず,心膜開窓術を施行したが,術後も心不全は治療抵抗性であった.術後46病日に死亡した.剖検では心重量642 gで,高度な両室肥大を認めた.組織学的には,Hematoxylin-Eosin染色で両心室,心房に広範な好酸性無構造物の沈着を認め,沈着物はCongo-red染色で橙赤色を示し,心アミロイドーシスと診断した.しかし他臓器へのアミロイド沈着はわずかであった.アミロイド沈着物は免疫組織化学染色でtransthyretinと同定され,家族歴がないことや臨床像,病理解剖所見を総合して野生型ATTR(ATTRwt)心アミロイドーシスと診断した.ATTRwt心アミロイドーシスは比較的予後良好とされているが,本症例は難治性心不全を呈した.心肥大を伴い心不全や不整脈をきたす高齢者の鑑別診断として,ATTRwt心アミロイドーシスの可能性を考慮する必要があると考えられた.</p>

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 49 (6), 603-609, 2017-06-15

    公益財団法人 日本心臓財団

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