暖候期日本における大雨の季節変化とその地域分布

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  • Seasonal transition of heavy rainfall and its regional distribution during the warm season in Japan.

抄録

1. はじめに<br><br>日本では台風・熱帯低気圧や停滞前線など様々な理由で大雨が発生する。一口に大雨と言っても、個々の研究における定義は様々であるが、時間スケールや降水量などの大雨の定義の仕方で、季節変化やその空間分布が変化する可能性がある。したがって複数の時間スケールと降水量を用いて、大雨の定義の仕方により、季節変化及びその地理的分布がどう変化するか調べる必要があるが、既往研究においてそのような観点からの検討は十分とは言えない。<br><br>本研究では、暖候期日本における大雨頻度の気候学的な季節変化、特に最大頻度が出現する時期についてとその空間分布を調べた。時間スケールおよび降水量による大雨の定義の仕方で大雨の季節変化がどのように変わるのか、半旬平均降水量によって代表させた雨の合計量との比較を含めて調べた。<br><br>2. データと方法<br><br>1980年~2013年(34年間)の4/1~10/27(第19半旬から第60半旬)における日本全国980地点の気象庁AMeDASの1時間降水量データを用いた。大雨の定義の仕方には、時間スケールについて1時間から1日までの5つのスケールを用い、降水量について閾値に3つの一定値と2つのパーセンタイル値を使用して、多数の指標を比較した。各指標について、各地点各日における34年間の積算発生数に11日間移動平均を2回行って求めた日別平滑値を5日間合計し、半旬ごとの気候値を作成した。<br><br>3. 結果<br><br>平均半旬降水量の最大半旬と大雨の最頻半旬が異なる地点は、地域的にまとまって存在した。日降水量50mmでは関東の内陸部や宮城県から岩手県南部、北海道北部などが挙げられる。大雨の指標を短い時間スケールまたは降水量閾値を大きくするほど、平均半旬降水量の最大半旬と大雨の最頻半旬の一致しない地点が増加した。この傾向は閾値に一定値、パーセンタイル値どちらにも共通して認められた。大雨の指標として時間スケールを短く降水量を多くすると、季節ごとに最頻半旬の地点数に増減が生じ、梅雨期に減少、盛夏期に増加、秋雨期に増加した。この変化の仕方には地域間に違いがあり、九州の大部分ではあまり変化しないが、東北、東海、近畿では変化が大きい。<br><br>最頻半旬の出現緯度の分布図を作成すると、長時間スケールで降水量閾値が小さい指標では、梅雨期と盛夏期、秋雨期の2つに分けられた平均半旬降水量に近い分布であるが、時間スケールが短くかつ降水量閾値が大きい指標にするほど、平均半旬降水量の分布から離れていく。短時間スケールかつ降水量閾値の大きい指標では、盛夏期に単一のピークとなる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845712970946560
  • NII論文ID
    130007412139
  • DOI
    10.14866/ajg.2018s.0_000323
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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