頭部傾斜時の眼球運動の3次元解析

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  • 3D analysis of binocular eye movement during head tilt

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抄録

 前庭眼反射は,頭部が動いた時に,その動きと反対方向に眼球を偏位させるもので,網膜上の像を安定させる働きがある.眼球反対回旋運動は,頭部傾斜時に,眼球が傾斜と反対方向に回旋する現象であり,耳石器,主として卵形嚢由来の前庭眼反射と考えられている.そしてこれは,数少ない耳石機能検査の1つである.今回の研究の目的は,頭部傾斜時の眼球運動を非侵襲的記録装置で両眼同時に記録し,眼球運動を3次元的に解析し,頭部傾斜との関連や,対称性,共同性を評価することである.対象は,内耳障害の既往のない健常人10人(男性6名,女性4名)である.被検者は特別に設計されたドームの中心の椅子に座り,両眼CCDカメラ付きヘルメットを装着してもらった.被検者の体はシートベルトで椅子にしっかり固定され,正中位から,鼻後頭軸に対して左右に35度まで傾斜され,傾斜時の眼球運動をカメラで記録した.その後,コンピュータに記録された画像を,ビデオ画像解析システムを用いて3次元解析した.回旋眼球運動は,両眼とも反対回旋がみられ,眼球運動と頭部傾斜角度との間に統計学的有意差を認めた(トレンド検定 p<0.001).水平眼球運動では,左傾斜時に左眼が右へ,右傾斜時には右眼が左への偏位が認められ,傾斜方向の外側眼のみが内側へ偏位するという非共同性がみられた.(トレンド検定,p=0.008, p=0.004)水平・垂直・回旋眼球運動とも,頭部傾斜に対して対称性を認めた.頭部傾斜時の,傾斜方向の外側眼の内側への偏位は,過去に電気生理学的に報告されている卵形嚢刺激の同側外転神経核への投射により説明できるのではないかと考えた.よって,この眼球運動は耳石器由来の前庭眼反射と推測される.この結果は,過去に報告がなく,今後の耳石機能研究の発展の一助となると考える.

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