海綿メタゲノムからのアグロバクチン生合成遺伝子クラスターの取得と異宿主発現

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  • Cloning and Heterologous Expression of the Agrobactin Biosynthetic Gene Cluster from a Marine Metagenome

抄録

<p>シデロフォアは微生物が産生する鉄の獲得に関与する化合物群であり、生物利用可能な鉄が不足する環境中において、多くの微生物が多様なシデロフォアを産生する。分離培養が困難な環境微生物の中には、他種微生物が産生した外因性のシデロフォアを自身の成育に必須とするものが報告されている。1また、シデロフォアは微生物の宿主への感染・共生等の成立にも関与し、2さらには競合菌の遊泳阻害活性を持つものなども報告されている。3この様に、シデロフォアは微生物のケミカルコミュニケーションにおいて重要な働きを持つと考えられる。</p><p>一方、海洋無脊椎動物由来の多様な生理活性物質の多くは共生微生物が産生していると考えられているが、その多くは分離培養が困難である。それら難培養共生菌が利用するシデロフォアを明らかにすることができれば、共生菌の生態の理解、さらには培養可能化につながると期待される。そこで、微生物を分離培養することなく、直接全てのゲノムDNAを取得し解析するメタゲノム法を用いて、海洋無脊椎動物中におけるシデロフォア生合成遺伝子の解析と、その生産物の同定を試みた。</p><p>Figure 1. 主なカテコール型シデロフォアの構造。</p><p>1.海洋メタゲノムライブラリの構築とシデロフォアスクリーニング</p><p> 日本沿岸各地で採集した海洋無脊椎動物を断片化後、バッファーあるいは海水中で組織を圧搾し滲出液を得た。遠心分離後、得られたペレットを溶菌バッファーで処理し、アルコール沈殿することで粗メタゲノムDNAを得た。その後、得られたDNAをフェノール/クロロホルム処理、CTAB処理等により精製し、アガロースゲル電気泳動により高分子量DNAを得た。その後、フォスミドベクターを用いクローニングする事で、平均インサートDNA長が約35 kbpで約50万クローンからなる海洋メタゲノムライブラリを構築した(Figure 2)。</p><p> 作成したメタゲノムライブラリに対して、Chrome Azurol Sを用いたシデロフォア活性スクリーニングを行ったところ、4合計52個のシデロフォア生産クローンを見出した(Figure 2)。得られた活性クローンについて、そのシデロフォア生合成遺伝子クラスターの一部を解析したところ、カテコール型、ヒドロキサム酸型、カルボキシレート型など様々なタイプのシデロフォア生合成遺伝子に相同性を示したことから、本手法によって多様なシデロフォア生合成遺伝子の取得と生産が可能であることが示された。しかしながら、既知の生合成遺伝子クラスターと全く同じものは存在せず、実際の生産物の同定は断片的な配列情報からだけからでは困難であった。</p><p>Figure 2. 海洋無脊椎動物からのメタゲノムライブラリの構築とシデロフォアスクリーニングの概要。</p><p>2.海綿メタゲノム由来シデロフォア生合成遺伝子クラスターの解析</p><p>生産物の同定を目的に、生合成遺伝子全体の解析と化合物の生産研究を行った。熊本県天草産の未同定海綿メタゲノム由来の活性クローンについて全長配列35,554 bpを決定したところ、得られたDNA配列は海洋細菌であるVibrio furnissiiのものと90%程度で一</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845712975521152
  • NII論文ID
    130007399553
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.56.0_poster55
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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