戦前日本における農家家計の生産性と集計的ショック

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タイトル別名
  • Effects of Aggregate Shocks on Productivity of Farm Households in Prewar Japan: Evidence from the Great Depression in Rural Japan
  • センゼン ニホン ニ オケル ノウカ カケイ ノ セイサンセイ ト シュウケイテキ ショック

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抄録

<p>人的災害の1つである経済危機は,ローカルな範囲での相互扶助や保険を困難にする集計的ショックとしての性格を有する.本稿では,集計的ショックとして戦前日本の農村経済に甚大な影響を及ぼした昭和恐慌をとりあげ,昭和恐慌が農家家計の生産性に及ぼした影響を定量的に検討した.まず,帝国農会の10カ年農家家計パネルデータを用いて,対象期間(1924~1933年)における農家家計のMalmquist生産性を計測するとともに,技術変化と効率性変化へと分解し,その推移を検討した.次に,集計的ショックに対して,いかなる農家家計が脆弱であったかを検討した.その結果,得られた主な結果は次のとおりである.第1に,恐慌発生後の1930年から1931年にかけて,Malmquist生産性は,他の期間にはみられない急激な低下が生じていたことがわかった.また,こうした生産性低下の要因は,生産フロンティアの後退による一時的な技術水準の低下と投入要素の配分効率の低下にあることがわかった.第2に,昭和恐慌による集計的ショックに対する脆弱性には地域性があることや,中・上層農経営の集計的ショックに対する強靱性が検出された.こうした経営規模層間の脆弱性の違いが,恐慌後の経営規模階層変動の契機として作用した可能性を指摘した.以上の知見は,ミクロ的・定量的観点から戦前日本の農家行動の動態に光を当てている.</p>

収録刊行物

  • 農業経済研究

    農業経済研究 88 (2), 137-155, 2016-09-25

    日本農業経済学会

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