メチル水銀が示す神経毒性への傷害性ミクログリアの関与

DOI
  • 星 尚志
    東北大学大学院薬学研究科生体防御薬学分野
  • 外山 喬士
    東北大学大学院薬学研究科生体防御薬学分野
  • 篠崎 陽一
    山梨大学大学院医学工学総合研究部薬理学教室
  • 小泉 修一
    山梨大学大学院医学工学総合研究部薬理学教室
  • 永沼 章
    東北大学大学院薬学研究科生体防御薬学分野
  • 黄 基旭
    東北大学大学院薬学研究科生体防御薬学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Involvement of microglia M1 polarization in the neurotoxicity of methylmercury

説明

<p>【目的】メチル水銀は中枢神経障害を惹起する環境汚染物質である。しかし、メチル水銀が示す神経毒性に関わる分子機構はほとんど不明である。我々は、メチル水銀を投与したマウスの大脳皮質において神経細胞死が惹起される際に、それに先行して炎症性サイトカイン類の発現が誘導されることを見出した。種々のストレスに曝された脳内では、ミクログリアから炎症性サイトカイン類が過剰に産生・放出され、炎症応答や神経変性などを引き起こすことが知られている。また、この一連の炎症反応に関わるミクログリアはM1型ミクログリア(傷害性ミクログリア)に分類されている。一方、脳は複数の細胞種がネットワークを形成しており、従来の細胞培養系を用いて脳内応答を調べることは極めて困難である。そこで本研究では、マウスの大脳を用いた組織スライス培養系を構築し、メチル水銀による神経細胞死への傷害性ミクログリアの関与を検討した。</p><p>【結果及び考察】今回構築した組織培養系で培養したマウスの大脳スライスをリポポリサッカライド(LPS)で処理した結果、傷害性ミクログリアへの活性化の指標となる様々な因子の発現上昇が認められ、本培養系においてミクログリアが正常に機能していることが確認された。また、大脳スライスをメチル水銀で処理しても、LPSと同様に、傷害性ミクログリアへの活性化が誘導された。そこで、神経細胞マーカーであるNeuN、または、ミクログリアマーカーであるIba1に対する抗体をそれぞれ用いて免疫染色を行ったところ、メチル水銀処理によって大脳皮質においてNeuN陽性細胞が減少し、逆に、Iba1陽性細胞が増加した。一方、これらの変動はミクログリア阻害剤であるミノサイクリンで前処理することによって抑制された。以上のことから、メチル水銀は傷害性ミクログリアへの活性化を誘導することによって大脳皮質での神経細胞死を惹起することが示唆された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845712981975552
  • NII論文ID
    130007432272
  • DOI
    10.14869/toxpt.45.1.0_p-63
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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