脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬ヌシネルセン(スピンラザ<sup>®</sup>)の薬理学的特徴と臨床試験成績

  • 大村 剛史
    バイオジェン・ジャパン株式会社 医薬開発本部
  • 佐伯 誠治
    バイオジェン・ジャパン株式会社 医薬開発本部
  • 荻原 一隆
    バイオジェン・ジャパン株式会社 メディカル本部
  • 飛田 公理
    バイオジェン・ジャパン株式会社 メディカル本部
  • Yan Ling
    バイオジェン・ジャパン株式会社 医薬開発本部
  • 鳥居 慎一
    バイオジェン・ジャパン株式会社 代表取締役社長

書誌事項

タイトル別名
  • Pharmacological and clinical profile of spinal muscular atrophy (SMA) therapeutic drug nusinersen (Spinraza<sup>®</sup>)
  • 新薬紹介総説 脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬ヌシネルセン(スピンラザ)の薬理学的特徴と臨床試験成績
  • シンヤク ショウカイ ソウセツ セキズイセイキン イシュクショウ(SMA)チリョウヤク ヌシネルセン(スピンラザ)ノ ヤクリガクテキ トクチョウ ト リンショウ シケン セイセキ

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抄録

<p>ヌシネルセン(スピンラザ®)は,脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)患者(survival motor neuronSMN1遺伝子の欠失又は変異を有し,かつSMN2遺伝子のコピー数が1以上であることが確認された患者)の治療に用いる日本初のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である.2017年7月3日に乳児型のSMAへの承認取得後,2017年9月22日に乳児型以外のSMAの効能追加が承認された.ヌシネルセンは,エクソン7を含有するSMN2 mRNA産生により完全長の機能性SMNタンパク質産生量を増加させる2'-O-(2-メトキシエチル)(2'-MOE)ASOとして,スクリーニングにより見出された.ヌシネルセンは,SMN2 mRNA前駆体に結合することでスプライシングが修正された成熟mRNAを産生し,完全長のSMNタンパク質翻訳を促すよう設計された完全修飾ASOである.4種のSMA病態モデルマウスへのヌシネルセン投与により,神経筋接合部の形態改善,筋線維の太さの増大,正向反射及び握力の改善,生存期間延長が認められた.臨床でのヌシネルセンの有効性は,発症時期と年齢の異なるSMA患者を対象に,2つの国際共同,無作為化,シャム処置対照,二重盲検試験(ENDEAR試験及びCHERISH試験)で検証され,ヌシネルセンはSMAの病型によらず運動機能を改善又は維持することが示された.さらに両試験に共通して,早期にヌシネルセン投与を開始した方が効果の高いことが示唆された.SMAが疑われる患者に遺伝子検査を行い,SMN1遺伝子の欠失又は変異とコピー数1以上のSMN2遺伝子が確認され,かつヌシネルセンの治療対象として適切と判断された場合,できるだけ早くヌシネルセンによる治療を開始することが,SMAの進行を抑制し,治療効果を最大化する上で望ましいと考えられる.ヌシネルセンはSMA治療に用いる日本初のASOであり,今後,ヌシネルセンが広く使用され,患者の運動機能改善によるQOL向上と介護者及び医療の負担軽減に貢献することが強く期待される.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 152 (3), 147-159, 2018

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (22)*注記

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