琉球列島産スジホシムシに着生するユンタクシジミ(新種)の記載

  • ルッツェン
    Department of Cell Biology and Comparative Zoology, Biological Institute, University of Copenhagen
  • 小菅 丈治
    Ishigaki Tropical Station, Seikai National Fisheries Research Institute

書誌事項

タイトル別名
  • Description of the Bivalve Litigiella pacifica n. sp. (Heterodonta: Galeommatoidea: Lasaeidae), Commensal with the Sipunculan Sipunculus nudus from the Ryukyu Islands, Japan

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抄録

琉球列島の干潟に生息するスジホシムシSipunculus nudus Linnaeus, 1766の体表に着生する二枚貝の一種を,ウロコガイ上科,チリハギガイ科の新種ユンタクシジミLitigiella pacifica n. sp.として記載した。ユンタクシジミの貝殻は薄質白色で,殻表には細かい成長脈が浅く刻まれる。薄い殻皮に被われるが,殻の中央付近では摩耗し,前後背縁付近では灰褐色に汚損されることが多い。殻の輪郭は長円形で,殻頂は突出しない。両殻とも1主歯を備え,右殻の主歯は左殻より大きく,発達した前後側歯を持つ。ホロタイプ:NSMT-Mo 73728,殻長5.9mm, 殻高4.5mm。タイプ産地:沖縄県石垣島名蔵湾。分布:沖縄島(沖縄市泡瀬干潟)・石垣島名蔵湾。付記:本種は,石垣島名蔵湾と沖縄本島泡瀬干潟の礫混じりの砂質干潟に生息するスジホシムシの体表に粘液糸で付着する。スジホシムシの後端付近に付くことが多いが,フィリピンハナビラガイがスジホシムシの後端に強く着生する状況と異なり,付着の程度は緩い。スジホシムシ1個体の体表に2〜3個体が付くことも珍しくなく,山下他(2005)によって提唱された和名はこの状況を把えて「数名が集まっておしゃべりをする」という意味の沖縄方言「ゆんたく」を用いたものである。フランス西岸からスジホシムシに着生する二枚貝として記載されたLitigiella cuenoti (Lamy, 1908)は,ユンタクシジミとよく似た形態の殻を持つ。両者の識別点として, L. cuenotiでは殻頂の原殻付近が突出するのに対しユンタクシジミでは突出しない点,主歯の大きさがL. cuenotiでは両殻等大であるのに対し,ユンタクシジミでは右殻の主歯が明らかに大きい点を挙げうる。組織切片を作製し生殖器官を観察した結果,ユンタクシジミは雌雄同体で複数回の性転換を行う可能性が示唆された。また,有糸型の精子が一対の貯精器官内に蓄えられていた。

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参考文献 (30)*注記

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