過活動膀胱治療薬ミラベグロン創製における薬理研究の貢献

  • 上島 浩二
    アステラス製薬株式会社 研究本部 研究統制部
  • 鵜飼 政志
    アステラス製薬株式会社 研究本部 研究プログラム推進部

書誌事項

タイトル別名
  • Contribution of pharmacological research to the discovery of a first-in-class drug, mirabegron, for the treatment of overactive bladder
  • カカツドウ ボウコウ チリョウヤク ミラベグロン ソウセイ ニ オケル ヤクリ ケンキュウ ノ コウケン

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抄録

<p>過活動膀胱とは,尿意切迫感を必須とした症状症候群であり,通常は頻尿と夜間頻尿をともない,切迫性尿失禁は必須ではないと定義されている.過活動膀胱の標準治療薬としてムスカリン受容体拮抗薬がしばしば用いられているが,口内乾燥,便秘といった副作用による服薬中止が問題とされてきた.このような状況から,我々はムスカリン受容体拮抗薬とは作用機序の異なる新規過活動膀胱治療薬がアンメットメディカルニーズを満たすと考えた.膀胱充満時には交感神経活性が高まり,膀胱平滑筋ではβアドレナリン受容体の刺激を介して弛緩することが知られていた.1999年に本邦の3つの研究グループからそれぞれ独立してヒト膀胱平滑筋においてβ3アドレナリン受容体が存在することが報告され,一部の研究グループからはβアドレナリン刺激による膀胱平滑筋弛緩反応において,β3アドレナリン受容体の活性化が主に関与していることが示された.そこで,我々は過活動膀胱治療の新規標的分子として,β3アドレナリン受容体に着目した薬理研究を実施した.選択的β3アドレナリン受容体作動薬であるミラベグロンは,ラット膀胱平滑筋において弛緩作用を示し,麻酔ラットにおいて静止時膀胱内圧を低下させた.また,ラット過活動膀胱モデルにおいて,ミラベグロンは蓄尿機能の改善作用を示した.さらに,臨床効果を予測するためにヒト膀胱組織を用いてin vitro等尺性収縮実験が行われ,ミラベグロンはヒト膀胱平滑筋の弛緩作用を示した.過活動膀胱患者を対象とした臨床試験において,ミラベグロンは優れた有効性と忍容性を示した.これらの薬理研究から得られたエビデンスにより,ミラベグロンがファーストインクラスの過活動膀胱治療薬として世界に先駆けて本邦で承認されたことに貢献した.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 152 (3), 111-118, 2018

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (26)*注記

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