沖永良部島以南に分布するオキナワヤマタカマイマイ類(有肺類:ナンバンマイマイ科:ニッポンマイマイ属)の再検討と再記載

  • 亀田 勇一
    Graduate School of Human and Environmental Studies, Kyoto University
  • 加藤 真
    Graduate School of Human and Environmental Studies, Kyoto University

書誌事項

タイトル別名
  • Systematic Revision of the Subgenus Luchuhadra (Pulmonata: Camaenidae: Satsuma) Occurring in the Central Ryukyu Archipelago

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説明

オキナワヤマタカマイマイ亜属(ナンバンマイマイ科)は琉球列島に固有の樹上性の陸貝である。筆者らは以前の研究においてオキナワヤマタカマイマイが以下の2つの生物学的種からなり,沖永良部島の固有種,オキノエラブヤマタカマイマイとヒメユリヤマタカマイマイもこの中に含まれることを示した。これを受けて本稿ではこの種群の再記載を行った。また,遺伝的にも独立種であると確認されたイヘヤヤマタカマイマイ,アマノヤマタカマイマイ,オモロヤマタカマイマイ,ウラキヤマタカマイマイの4種についても生殖器形態を再評価し詳述した。Satsuma (Luchuhadra) largillierti (Pfeiffer, 1849)シラユキヤマタカマイマイ(新称)殻は本亜属にあってはやや低平で,殻高は殻径より小さい。ほとんどの個体は白色無帯あるいは周縁に1本の色帯を持つ。生殖器では膣や陰茎付属肢はあまり肥厚せず,陰茎本体は陰茎鞘の半分から3分の2程度の長さであること,鞭状器が短く急に細まること,輸精卵管が受精嚢柄部の周りを螺旋状に1回転する個体が多いことなどが特徴である。従来沖縄島南部の個体群がこの学名で呼ばれていたが,それは次種に相当する。本種の分布域は沖縄島の浦添市以北と沖永良部島であり,那覇市以南には生息しない。なお沖永良部島の個体群はヒメユリヤマタカマイマイS. sooi Minato, 1982と呼ばれてきたが,沖縄島産の本種と遺伝的・形態的に明確な差が見られないため同種となる。Satsuma (Luchuhadra) eucosmia eucosmia (Pilsbry, 1895)オキナワヤマタカマイマイ 殻は前種よりやや大きく,比較的背が高い。色彩は赤地に1本の白帯を周縁に持つもの, 白地に2本の色帯を周縁に持つもの,白色無帯の3つが基本的なパターンである。生殖器では膣と陰茎付属肢の基部が著しく肥厚すること,陰茎本体が陰茎鞘の4分の3以上の長さであること,鞭状器がやや長く徐々に細くなることなどで前種と区別できる。沖縄島南部と北部に分布し,南部ではアマノヤマタカマイマイと,北部では前種と同所的に生息することがある。これまでに"オキナワヤマタカマイマイSatsuma largillierti (あるいはLuchuhadra largillierti)"として図鑑等で紹介されていたものの多くは本種である。学名を伴わない場合でも本種の個体をオキナワヤマタカマイマイとして取り上げている例が多いことから,混乱を避けるため本種の和名をオキナワヤマタカマイマイとする。なおオキノエラブヤマタカマイマイは従来独立種とされてきたが,遺伝的には本種に含まれるうえ,殻形態以外では明確に区別できないため亜種(S. eucosmia erabuensis)とする。

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参考文献 (43)*注記

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