中学校技術・家庭科におけるパンツ製作の変遷と提案

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タイトル別名
  • The changes and suggestions for sewing of pants on home economics class in junior high school

抄録

【目的】<br>中学校技術・家庭科の衣生活分野の授業において,被服製作の内容は徐々に簡易になっている。この理由として,家族の着用する衣服を各家庭内で製作する実態がほとんどないこと,それに伴い生徒の裁縫経験が少なくなり技術が低下していること,家庭科の授業時間数が減少していること,男女共修により性別にとらわれない題材が選択されていること,教員自身の技術力の低下などが挙げられる。そのような状況の中,被服製作の題材としてのパンツは,パジャマの一部のロングパンツ,短パン,ハーフパンツと時代とともに丈は変わるものの,過去35年以上にわたり中学校家庭科教科書に掲載され続けている。そこで本研究では,中学校の被服製作のパンツを取り上げ,どのような変化をたどってきたかを明らかにする。その結果を元に,現状に即して教材として取り入れやすいパンツの製作方法を提案する。<br><br>【方法】<br>①文献調査:昭和55年検定版以降の中学校家庭科の教科書について,被服製作の題材として掲載されているパンツ製作に焦点を絞り,4~6年ごとの改訂により,どのような変化をたどったかの調査を行った。現在パンツ製作を掲載している2社の教科書を取り上げ,時代による比較と出版社による比較を行った。パンツ製作のために掲載されている図と説明文を元に,デザイン,縫製順序ならびに縫製方法について検討した。 ②部分縫いの製作実習:3種のウエスト回りの縫製方法,すなわち,(a)「縫い代4 cm,ゴムテープ1本,上部のミシン縫いなし」,(b)「縫い代4 cm,ゴムテープ2本,上部のミシン縫いあり,ゴムテープを通す部分の幅1.2 cm」および(c)「縫い代5 cm,ゴムテープ2本,上部のミシン縫いあり,ゴムテープを通す部分の幅1.7 cm」を設定し,大学生11名による部分縫い製作を実施した。また,厚さの異なる5種の布を用いて上記(b)の方法により部分縫いを作製した。以上の部分縫い作品について,6種類のひも通しを用いて8コール(0.7 cm幅)のゴムテープが通るかどうかを検証した。③上述した①および②の結果から,中学校家庭科の被服製作に適するパンツの製作方法を検討した。<br><br>【結果と考察】教科書におけるパンツ製作の変遷を調べたところ,デザインに関しては脇縫いの有無およびポケットの有無,縫製順序に関しては股上と股下の順序およびウエスト回りと裾の順序,そして,縫製方法に関してはウエスト回りの縫い方とゴム通し口の縫い方について,時代や出版社によって相違点が認められた。第一に,脇縫いについては,脇縫いを省略することにより作業工程を減らす方法を維持してきた,あるいはその方向に変更されてきたと考えられるが,これはゆったりしたデザインの流行と中学生の技術水準を考えれば時代に即したものであり,脇縫いなしのデザインが中学校家庭科の教材に適すると考えられる。第二に,ポケットについては,作り方と付け方について「参考」など補足的な箇所では必要であるが,パンツ製作の工程や主となる説明図には不要と考えられる。これは,エプロン等他の題材でポケットの説明があるかどうかにも左右される。第三に,股上と股下の縫製順序については,股上が先の方が直線に近い形で縫え,適すると考えられる。第四に,ウエストと裾の縫製順序では,縫製に慣れている者ならばいずれが先でも問題はないが,経験が浅い中学生では,できるだけ難易度の低い裾の始末を先に,ウエストの始末を後にする方が適すると考える。第五に,ウエストのゴムテープは1本でよく,布の厚みや中学生の縫製技術による誤差を考慮すると,ゴムテープの通る部分の幅は最低1.7 cm必要であると考えられる。第六に,ゴム通し口は股上を縫い合わせる際に一部を縫い残し,垂直(縦)方向とするのがよいと考えられる。この際,ウエスト上部にミシン縫いがあるとよい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845712998984960
  • NII論文ID
    130007472534
  • DOI
    10.11549/jhee.61.0_11
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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