ウシ初期胚における葉酸代謝酵素SHMT2の機能解析

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  • Analysis of SHMT2 function in bovine preimplantation embryos

抄録

<p>【背景】我々は,葉酸とメチオニンの共役した代謝経路(one-carbon metabolism)を構成する酵素群の機能解析から,同代謝がウシ初期胚の胚盤胞発生に必須であることを見出している。本研究では葉酸代謝酵素の内,ミトコンドリア内で機能するセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ2(SHMT2)のウシ初期胚発生における役割について解析した。【方法】常法の体外受精によって得られた媒精20時間後の1細胞期胚からプロナーゼを用いて透明帯を除去し,WOWディッシュのマイクロウェル内で培養した。媒精72時間後に8–16細胞期に到達している胚を残し,WOWディッシュ上でLipofectamine RNAiMAX Reagent(Invitrogen)を用いてSHMT2をターゲットとするsiRNAを導入した(オクトリポフェクション法)。ノンターゲティングsiRNAを導入した区を対照とし,siRNA導入48時間後(桑実胚)におけるノックダウン効率をRT-qPCR法で評価した。また胚盤胞発生に及ぼす影響を導入120時間後(媒精から8日後)に観察した。胚盤胞の細胞数(総・内部細胞塊・栄養膜)をCDX2抗体染色と核染色を用いて解析した。【結果・考察】SHMT2ノックダウン区ではSHMT2のmRNA発現が対照区に比べ92%抑制された(P<0.001)。8–16細胞期からの桑実胚発生率は対照区:83.2%,ノックダウン区:80.1%,胚盤胞発生率はそれぞれ63.1%,53.5%であり,両区に有意な差は無かった。また,総細胞数,内部細胞塊細胞数,栄養膜細胞数にもノックダウンによる有意な影響は見られなかった。これらの結果から,ウシ初期胚の胚盤胞発生にSHMT2の機能は必須でないことが示唆された。ミトコンドリア外で機能するSHMTのアイソフォーム(SHMT1)や,SHMTと,基質と最終生成物としての葉酸誘導体を共有する別の酵素群(MTHFD)の代謝経路によって,SHMT2の胚発生における機能は代償される可能性が考えられた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713001239168
  • NII論文ID
    130007488136
  • DOI
    10.14882/jrds.111.0_p-35
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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