植物毒素コロナチンの誘導体化による植物ホルモン受容体サブタイプ選択的アゴニスト開発と未知標的探索

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  • Subtype-selective Agonist of Phytohormone Receptor and Molecular Probe for Target Identification by Phytotoxin Coronatine Derivatives

抄録

<p>【序論】</p><p> 植物病原菌Pseudomonas syringaeが分泌する植物毒素コロナチン (+)-1は、植物ホルモンである7-iso-ジャスモン酸イソロイシン(JA-Ile, (+)-2)のmimicであり、植物科学研究において重要なツール分子として用いられてきた(1-3)。また近年、(+)-1は植物病原菌の感染因子として再発見され、植物病理学上からも注目を集めている(4)。</p><p> コロナチンの例のように、天然物の多くは、複数の活性を併せ持つ多機能性分子である。その詳細な作用機序を正確に解析するには、それぞれの活性を厳密に切り分けた誘導体化と、その活性を効率良く評価するアッセイ系の構築が必要不可欠である。今回我々は、コロナチンを元にこれらを達成し、その特徴的な生物活性を切れ味よく切り分けることで、それぞれの機能解明に貢献しうる強力なケミカルツールを開発したので報告する。</p><p>1. 植物ホルモン受容体サブタイプ選択的リガンドの開発</p><p> コロナチン (+)-1は、JA-Ileの既知受容体COI1-JAZに結合し、老化促進や生育阻害、病傷害応答など多様な生物活性を示す(2, 3)。モデル植物シロイヌナズナのゲノム中には、COI1は1種類のみコードされるが、JAZは12種類のサブタイプがコードされており、COI1とJAZ1-12の様々な組み合わせが、多様な生物活性を調節すると推定されている(5)。しかし植物科学研究で常用される遺伝学的手法は、このような遺伝的重複性をもっとも苦手とするため、各JAZサブタイプの生物学的役割は未解明である。その解明には、JAZサブタイプ選択的アゴニストの開発が強く望まれている。</p><p> コロナチン (+)-1は、非アミノ酸部のコロナファシン酸 (+)-3((+)-CFA)と、アミノ酸部のコロナミン酸(+)-4((+)-CMA)との縮合体である。我々はすでに、天然型コロナチンを含む4種の立体化学ハイブリッド体((+)-1, (-)-1, (+)-CFA-(-)-CMA (5), (-)-CFA-(+)-CMA (6))の合成を達成している(6)(Fig. 2、第56回討論会にて報告)。</p><p> Yeast Two Hybrid(Y2H)アッセイにおいて、(+)-1のみがCOI1-JAZ9との結合親和性を示したが(Fig. 3a)が、興味深いことに、COI1-JAZ受容体の制御下にあるジャスモン酸応答性遺伝子AOSの発現量は、(+)-1以外に6でも弱いながら増加した(Fig. 3b)。この結果は、6がJAZ9以外のJAZサブタイプとCOI1との複合体に対するアゴニストとして機能することを示唆するものである。そこで次に、6のJAZサブタイプ選択性を確かめるため、試験管レベルのCOI1-JAZ結合活性を評価する系を構築した。</p><p> 全てのJAZサブタイプを網羅するため、JAZタンパク質から20アミノ酸程度のペプチドからなるコロナチン相互作用ドメインを切り出したdegron(断片)ペプチドを用いる評価系を開発した。Zhengらは、JAZ1のdegronペプチドを用いてCOI1-コロナチン-JAZ1の三成分複合体のX線結晶構造解析に成功していることから、 degronペプチドのみでも十分な親和性をもつ複合体形成が期待できると考えたからである(Fig. 1b)(7)。そこで、JAZ1ペプチドのN末端にCysを導入し、緑色蛍光のフルオレセイン類縁体であるOregon Green (OG) を結合させた蛍光性JAZ1を化学合成した(Fig. 4a)。OG修飾JAZ1ペプチド、COI1、(+)-1を用いて、フルオレセイ</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713003500928
  • NII論文ID
    130007492968
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.57.0_oral10
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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