中国~東西日本における梅雨期の日々の降水特性と季節進行に関する気候学的解析(序報)

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  • Climatological analysis on the daily precipitation features and their seasonal evolution from China to Japan in the Baiu season (Preliminary results)

抄録

東アジアでは、盛夏期の前に梅雨前線(日本)やメイユ前線(中国)と呼ばれる亜熱帯前線帯が現れ、西日本や長江流域では50 mm/dayを超えるような「大雨日」が頻繁に現れることはよく知られている(本報では、このような日を「大雨日」と呼ぶことにする)(Ninomiya and Mizuno 1987, Matsumoto and Takahashi 1999)。一方、東日本では、大雨日の出現頻度はそれほど高くないが、西日本とは異なるタイプの大雨日の特徴がみられること、長期データでみた多少頻度の少ない現象も含めた降水イベント特徴の多様性について、本グループは報告を行った(2017年春、秋の日本地理学会、他)。一方、中国での梅雨期の降水や前線帯の特徴の季節進行については、1979 年についてはKato (1985, 1989, JMSJ)等が、また、Matsumoto and Takahashi (1999, Geograph. Rev. Japan Ser.B)は、東アジア各地での1961~1990年の日降水量データに基づく解析により、5~8月の降水量と大雨日の寄与の地域的違いや季節進行について報告した。<br><br> 本報では、1951~2010年というより長い期間における中国や日本の各地点の日降水量データを使用し、季節進行や、中国大陸から東日本に至る梅雨降水帯の変動の東西スケールや、降水システムの東西での違い、多様性にも注目した解析に着手した。本発表ではその第1報を報告する。なお、本研究で用いた中国の日降水量データは、科研費 基盤研究(S)「過去120年間におけるアジアモンスーン変動の解明(H26~H30、代表者:首都大学東京 松本 淳)の一環として、研究代表者が中国から入手したものである。<br><br> 中国と日本の地点についての日降水量データに基づく総降水量と「大雨日」の寄与の季節進行をみる。大枠としての季節進行を概観するために、日毎の平均を更に31日移動平均した時系列をみると、長江流域にあたる安慶では、長崎と同様な時期に降水量のピークがあり、そのときに大雨日降水量の寄与もかなり大きい(但し長崎よりもピークの降水量は少ない)。北側の黄河流域付近に位置する済南では大雨日の寄与の増大を伴って7月下旬頃に日降水量がピークになるが、大雨日の寄与率も安慶や南京(略)、九州の長崎に比べて低い。但し、長江流域から単純に夏に降水帯が黄河流域に北上するというよりも、長江流域の梅雨に対応する降水量の季節的増大がみられる時期から、黄河下口域でも徐々に降水量が季節的増大を示す点は興味深い。Murakami and Huang (1984, JMSJ) は、1979年の事例解析に基づき、長江流域の梅雨開始に伴って、そこを通過するメソα~総観規模の擾乱に対応して、華北平原でも日々の降水量のピークがみられるようになる点を指摘しており、このような観点からの長期的な吟味も行う予定である。<br><br> 蔵田他(2012, 岡山大学教師教育開発センター紀要)は、教材開発研究の一環として、九州の長崎での1971~2000年の7月後半頃には、無降水日は6月後半よりもかなり多くなるにもかかわらず100 mm/dayを超える「顕著な大雨日」の頻度は、ほぼ同じであることを指摘した。そこで、無降水日の出現頻度も調べると、中国の北側の2地点では、降水量の季節的増大と無降水日の減少がよく対応しているが、南側の2地点では、これらの地点や日本の地点とは異なり、無降水日の明確な減少がない中で、総降水量や「大雨日の寄与」の増大がみられる点が興味深い。これらが意味することの考察も含めた解析結果も報告予定である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713026810496
  • NII論文ID
    130007539826
  • DOI
    10.14866/ajg.2018a.0_165
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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