ジオパーク制度による中国自貢市における井塩景観の維持

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  • The Conservation of Well-Salt Landscape Based on Geopark Mechanism in Zigong, China

抄録

1. 研究背景と目的<br> ジオパーク制度は、地質学的意義のあるサイトと景観を保全し管理し、教育を活用し、持続可能な開発ができる地域認定プログラムである。従来、地質的な特徴を重視するジオパークに対して、坂口(2016)、河本(2011)は地域における人間の活動、人文景観などの地理的な要素をジオパークの構築に融合することを主張した。本発表で対象とする自貢市は中国有数の塩産地として知られ、市内に残る古い塩井、塩の道、塩業会館など塩業に関連する景観は、地域の歴史と人間活動を示す重要な証拠であり、地域の文化と風俗を表す地域資源と考えられる。自貢市は2008年に恐竜と井塩を主題として世界ジオパークネットワーク(以下、GGN)に登録した。2015年に自貢ジオパークの範囲拡張が提案され、2017年井塩景観をメインとする文化景観を含む登録が行われた。本発表では地域的背景を踏まえ、自貢市における井塩景観の維持において、ジオパーク制度がいかなる役割を果たしているかを検討する。<br>2. 研究対象地域<br> 四川省自貢市は中華人民共和国四川省に位置する「地級市」であり、四川盆地南部の丘陵部にある。面積は4,373㎢、人口は3,239, 353人(2017年末時点)である。自貢ジオパークは自貢市の西部に位置し、恐竜エリア、塩業エリア、青竜山エリアの3つエリアを有する。面積は1630.46㎢、自貢市の3分の1を占める。<br>3. 研究方法<br> 文献資料を用いて、自貢市における井塩生産の歴史経緯を把握した上で、現地での景観観察と聞き取り調査により、自貢ジオパークにおける塩業エリアにおいて井塩景観の管理・活用状況を明らかにする。さらには、ジオパークエリアの井塩景観はいかなる位置付けであるかを分析する。<br>4. 結果<br> 自貢市は、白亜紀の恐竜化石遺跡と長い歴史を持っていた井塩遺跡をメインに、希少な植物群であるへゴを加え、2008年GGNに「自貢ジオパーク」として登録した。登録最初から、地質的なものをだけを展示することでなく、自貢という土地で存在していた人文的景観も含める意図がみられた。自貢ジオパークは2つのジオツアーコースがあり、恐竜の考古現場と考古による化石、層序断面、硅化木など地球進化を展示するコースと塩井と塩業歴史博物館をめぐる人間活動による井塩業の発展を説明するコースである。この2つのコースは、自貢ジオパークは地質的な側面だけでなく、地理的な側面も意識的に来訪者に提示している。<br> ジオツアーのほか、ジオパークは教育という重大な役割を有している。自貢ジオパークの場合、2つの博物館はその役割を担っている。とくに、自貢塩業歴史博物館は毎月異なるテーマで複数のイベントを実施しているほか、近隣地域の学校に行き、塩業歴史に関する普及も行っている。井塩知識の普及にとって、最も重要な拠点といえる。一方で、普通の来訪者数は人気の恐竜博物館と比較すると、3割未満に過ぎず、観光誘致力は弱いことがわかった。<br> 自貢ジオパークにおける井塩景観は塩業歴史博物館をはじめ、塩井、塩の輸送ふ頭、集落などを含むが、これら分散している景観を統合し、人地間の相互影響を表現する地理的なストーリーを作り、地元の学生と来訪者へ伝えることが必要である。井塩景観の歴史と教育価値によりこの古い景観を活用でき、維持できると考えられている。<br><br>参考文献<br>坂口 豪 2016. ジオパーク秩父における地質学的な視点及び李地学的な視点の相互関連性によるジオストーリーの構築. 観光科学研究 9:131-139.<br>河本大地 2011. ジオルーリズムと地理学発「地域多様性」概念―「ジオ」の視点を持続的地域づくりに生かすために―. 地学雑誌 120(5):775-785.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713026811648
  • NII論文ID
    130007539800
  • DOI
    10.14866/ajg.2018a.0_35
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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