上皮間葉転換の腫瘍における意義

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  • 佐谷 秀行
    慶應義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御研究部門

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タイトル別名
  • Significance of Epithelial-Mesenchymal Transition in Cancer

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抄録

上皮性癌細胞の浸潤,転移は細胞が原発巣の母集団から離れ,周囲組織へ浸潤することから始まる.この過程には,上皮細胞がその上皮としての性質を喪失し,間葉系細胞のように振る舞うこと,いわゆる上皮間葉転換(epithelial-to-mesenchymal transition: EMT)と呼ばれる現象が生じていることが明らかになってきた.EMT は癌細胞そのもののシグナルの変化のみならず,周囲の環境変化によって誘導され,浸潤・転移を引き起こすメカニズムに対する考え方が大きく変化してきている.また,肺線維症・肝硬変・腎線維症・網膜増殖性疾患など各種臓器の線維化の発症にもEMT が関与していることが知られている.さらに,家族性腫瘍疾患の一つである神経線維腫症1 型における多発性神経線維腫の形成にも,EMT が関わっていることがわかってきた.EMT を抑制する薬剤は,さまざまな難治性疾患の新たな治療戦略として有望である.

収録刊行物

  • 家族性腫瘍

    家族性腫瘍 10 (2), 71-74, 2010

    一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会

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