保存的加療にて治癒が得られたGradenigo症候群の1例

DOI
  • 蓮 琢也
    獨協医科大学埼玉医療センター耳鼻咽喉科学教室
  • 多田 剛志
    獨協医科大学埼玉医療センター耳鼻咽喉科学教室
  • 海邊 昭子
    獨協医科大学埼玉医療センター耳鼻咽喉科学教室
  • 穴澤 卯太郎
    獨協医科大学埼玉医療センター耳鼻咽喉科学教室
  • 田中 康広
    獨協医科大学埼玉医療センター耳鼻咽喉科学教室

書誌事項

タイトル別名
  • A case of Gradenigo syndrome successfully recovered by conservative therapy

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抄録

<p>Gradenigo症候群は1904年にGradenigoによって報告された中耳炎、三叉神経痛、外転神経麻痺を3主徴とする症候群である。</p><p>症例は51歳男性、20xx年8月に左耳痛にて近医受診し、左急性中耳炎と診断され、内服加療を開始した。しかし耳漏と頭痛、複視と段階的な増悪を認めたため、近医受診から3週間で当院紹介となった。初診時、HbA1c 11. 9%とコントロール不良の糖尿病が認められた。左急性中耳炎と三叉神経第一枝領域の疼痛、左外転神経麻痺の3徵からGradenigo症候群の診断で緊急入院となった。入院同日に施行したCTでは鼓室および乳突洞に軟部陰影を認めた。錐体尖方向には含気腔や蜂巣構造はなく、軟部陰影を認めたものの骨髄との鑑別は困難であった。しかしながらMRIで患側の錐体尖部がT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号、拡散強調画像で高信号、T1脂肪抑制画像で抑制なしの所見を認めたため、炎症の存在を考慮した。入院当日に左鼓膜換気チューブを留置し、点滴加療を開始した。抗菌薬はセフトリアキソンNa(CTRX)4g/dayを選択し、硬膜浮腫の改善を目的にハイドロコーチゾン1000mg/day 3日間の投与を行った。治療は奏功し、耳痛、耳漏症状は速やかに消失した。第7病日には三叉神経第一枝領域の疼痛も消失した。第10病日に軽快退院となったが、その後外来通院を継続し、第30病日に外転神経麻痺も治癒を得た。</p><p>脳膿瘍やS状静脈洞血栓症を伴わないGradenigo症候群に対しては、慎重な経過観察と適切な抗菌薬で治療が可能と考える。</p>

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