スタチンの作用の基礎研究(回想録)

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タイトル別名
  • スタチン ノ サヨウ ノ キソ ケンキュウ(カイソウロク)

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抄録

<p>Compactin (ML-236B)は,青かびの一種,Penicillium citrinum Pen-51の代謝産物からコレステロール合成阻害物質として単離されたHMG-CoA reductaseの競合的阻害物質である.培養細胞系に添加すると,ステロール合成を強く阻害したが,脂肪酸合成を阻害せず,また,DNA合成,RNA合成,タンパク質合成を全く阻害しなかった.しかし,高濃度で長時間培養すると,細胞内に充分コレステロールが存在するにもかかわらず細胞増殖は停止した.この増殖停止はメバロン酸によりブロックされたので,コレステロール以外にステロール合成系(バイパス経路を含む)の何らかの産物が細胞に必須であると推定された.既存のクロフィブレート系薬剤はCompactinと異なり,無細胞系ではHMG-CoA reductase活性を全く阻害しないが,培養細胞系に添加すると,分解系を亢進させHMG-CoA reductase酵素量を低下させた.Compactinはラットでは良い結果は得られなかったが,イヌ,サルでは,劇的にコレステロール値を低下させた.世界初の臨床試験でも優れた治療効果が得られていたが,動物の長期毒性実験の結果で中止になった.しかし,compactinの代謝産物pravastatin(メバロチン)の開発を成功させ,上市に至った.現在では,類縁物質の7種のスタチンが心筋梗塞予防薬として世界中で使用されている.</p>

収録刊行物

  • 化学と生物

    化学と生物 56 (3), 143-151, 2018-02-20

    公益社団法人 日本農芸化学会

参考文献 (13)*注記

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