(超低速度衝突)むち打ち損傷受傷疑義事案に対する一考察

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タイトル別名
  • (超低速度衝突)むち打ち損傷受傷疑義事案に対する一考察 : 工学的知見に対する再評価として
  • (チョウテイソクド ショウトツ)ムチウチ ソンショウジュショウ ギギ ジアン ニ タイスル イチ コウサツ : コウガクテキ チケン ニ タイスル サイヒョウカ ト シテ
  • —工学的知見に対する再評価として—

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抄録

<p> 交通事故におけるむち打ち損傷に対する工学的問題については,一時期,加害者側(主に保険会社)から,いわゆる無傷限界値(閾値)論により,被害者の受傷を否定する工学鑑定(私鑑定)が乱発され,訴訟内外において大きな社会問題となった。とりわけ,東京三弁護士会交通事故処理委員会むちうち症特別研究部会等は,この工学鑑定等の手法に対する問題指摘を行った。そこで,社団法人日本損害保険協会の委託で組織された事故解析共同研究会が実施した実車衝突実験や模擬衝突実験の結果,無傷限界値(閾値)論には,「すみやかに終止符がうたれるべきである」との報告書がまとめられた。これを受けて,日本賠償科学会においても,「少なくとも現在の工学的問題状況としては,低速度追突事案ではむち打ち症は発生しないという一般的法則性は否定されているといってよい」との見解を肯定し,この問題は一旦,議論としては収束したように思われる。最近では,古笛恵子弁護士が,損害賠償とは全く無関係の場面で,むちうち損傷を低減するための世界的研究の進展を踏まえ,「一時の工学的意見書に対する不信感があまりにも拡大解釈され,工学的知見すべてを排斥する姿勢をとっているのでないか,立ち止まって反省すべき時期にあるのではないかとも思われる」として,「新しい問題意識」を示している。一方,保険実務に目をむけると,人身傷害補償保険の普及に伴い,被保険者による恣意的な症状の訴えによる,受傷疑義事案が依然散見される状況である。そこで,本稿は超低速度事案におけるむち打ち損傷受傷疑義事案に対する考察を通じて,工学的知見に対する再評価を試みるものである</p>

収録刊行物

  • 損害保険研究

    損害保険研究 79 (1), 159-186, 2017-05-25

    公益財団法人 損害保険事業総合研究所

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