批判的思考力を育成する活動型社会科学習 ― 外交交渉ゲーム“Independence Day”の実践を通じて ―

書誌事項

タイトル別名
  • Active Social Studies Lessons to Cultivate Critical Thinking Through a Diplomatic Negotiation Game: Independence Day
  • ヒハンテキ シコウリョク オ イクセイ スル カツドウガタ シャカイカ ガクシュウ : ガイコウ コウショウ ゲーム"Independence Day"ノ ジッセン オ ツウジテ

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抄録

<p> 今日の社会科には,「主体的・対話的」な活動型学習を通じて「深い学び」を実現させることが求められている。これまでの社会科における「深い学び」としては,既存の社会の正当性や妥当性を判断する批判的思考力の育成があった。特に近年では,他の選択肢と既存の社会との比較によって批判的思考力を育成しようとする研究も見られるが,こうした研究は他の選択肢を教師が提示するに留まるために,学習者による社会事象の解釈の選択の幅が狭いという点に課題がある。本稿では,こうした課題を解決するために,学習者が問題解決当事者となり,既存の社会に対する比較対象となる他の選択肢を多様に創出しうるようなコミュニケーション活動を組織した活動型社会科学習を提起する。その上で,こうした活動型学習においてこそ,他にありえた選択肢と既存の社会との比較を通じた批判的思考力が育成されることを,授業実践を通じて明らかにする。</p><p> 本稿ではこの観点から,従来の合意形成能力の育成をめざす社会科学習を批判的に継承し,教室内に多様な合意を創出することをめざした。その上で,外交交渉ゲーム“Independence Day”を事例として,「合意形成の多テーブル状況」,合意の「可視化・整理・比較」,「活動目標と認識目標の区別」という3点の授業構成概念を抽出した。本授業の学習効果の分析から,以下の3点が明らかとなった。①学習者は,活動型授業をおもしろいと感じた。②学習者は,戦後日米関係における多様な合意の存在に気づいた。 ③本授業において,他の選択肢と既存の社会とを比較することを通じて,批判的思考力が育成された。</p>

収録刊行物

  • 社会科研究

    社会科研究 87 (0), 13-24, 2017-11-30

    全国社会科教育学会

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