P-2-E19 繰り返す持続性吃逆に呼吸障害を併発した重症心身障害者の1例

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抄録

はじめに 吃逆は通常、数時間以内でおさまるが、時に持続することがあり、48時間以上続くものを持続性吃逆、1カ月以上続くものを難治性吃逆と呼ぶ。持続する吃逆の原因として、脳梗塞などの中枢神経疾患、胃食道逆流症、呼吸器感染症、電解質異常、薬剤などの報告があるが、不明な場合も多い。今回、重症心身障害者で持続性吃逆の治療により呼吸障害を来し対応に苦慮した症例を経験したので報告する。 症例 41歳男性。脳性麻痺、知的障害、てんかんのある大島分類1の重症心身障害者。栄養は胃瘻管理で、胃食道逆流症に対して内服治療中で、夜間無呼吸に対して非侵襲的陽圧呼吸療法(NPPV)を導入している。35歳より持続性吃逆を8回認め、うち4回は呼吸不全を伴い入院治療を要した。入院経過中、発熱やCRP高値、低ナトリウム血症を認め、吃逆の原因となる薬剤としてフェニトインを使用しているが、1回のみ血中濃度が高値だった。治療として、ジアゼパム坐剤、ミダゾラム点鼻、メトプロクラミド投与を行い、吃逆は消失したが、いずれも同時に呼吸抑制を認めNPPVを使用した。4回目の入院では芍薬甘草湯を用いたが無効で、NPPV使用中に呼吸障害が増悪し、胸部CTで左主気管支閉塞と無気肺を認めた。気道閉塞に対する治療を優先し、改善とともに吃逆も消失した。 考察 本症例の持続性吃逆には呼吸器感染が関与していると考えられたが、他にも胃食道逆流症や中枢性無呼吸があり、直接的な原因は不明だった。本症例では治療として用いた中枢に作用する薬剤で容易に呼吸抑制を来したことから、NPPVを併用したが、その使用により無気肺が引き起こされたと考えられた。重症心身障害者の持続性吃逆では、原因として考えられる要素が多く、治療による二次障害もおきやすいため、治療の選択が困難だった。

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