地形面縦断面形の数式近似による、MIS 6以降における武蔵野台地の発達過程

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  • The terrace development of Musashino Upland since MIS 6 with the long profile approximation for the geomorphic surfaces

抄録

1. はじめに<br><br> 最終間氷期から最終氷期における気候・海水準変動に対する河川の応答様式を研究した例は数多く存在するが(平川ほか, 1975 ; 吉永ほか, 1986など)、海洋酸素同位体ステージ(Marine Isotope Stage : MIS)のサブステージの時間精度で河川の応答様式を研究した例は少ない(久保, 1997など)。とくにMIS 5.5 の高海水準期から海面が低下していく段階における河川の詳細な応答様式は、千年~万年スケールでの地形変化の将来予測にも重要な知見となる。本研究では、MISのサブステージレベルでの地形変化の様子を検証するために、多量のボーリング柱状図データがあり詳細な地形面区分が行われている武蔵野台地を対象にして、ボーリング柱状図データを用いた地形縦断面の数式近似解析を行い、MIS 6以降における武蔵野台地の形成過程を検討した。<br><br>2. 方法<br><br>ボーリング柱状図解析システム(産総研)を用いて、東京都から借用したボーリング柱状図データから地形地質断面図を作成した。遠藤ほか(2018)の地形面分類図に基づいて、武蔵野1面・武蔵野2面・立川1面にて、8本の測線を設定した(Fig. 1)。測線は、できる限りボーリング柱状図を多く含み、かつ地形面の最大傾斜方向に一致するように設定した。各縦断面図において、最上位礫層の頂面標高を1本ずつ認定した。その際、最上位礫層の上位を盛土で覆われている柱状図、および最上位礫層の上面が地表面になっている柱状図については、礫層上部が削剥されている可能性があるため除外した。各縦断面で認定した標高点をプロットし、直線・指数関数・累乗関数(べき関数)・多項式関数(2次~6次)の8種類の数式で縦断形全域を近似し、決定係数R2を参考に適合する関数を調べた。<br><br>3. 結果<br><br> 武蔵野面の縦断面形は単調減少の3次多項式関数近似、立川面の縦断面形は単調減少の2次多項式関数近似がよく適合した。武蔵野面の3次関数について変曲点を求めると、L-M1~L-M6では下流部に変曲点がみられた。L-M7のみ、3次多項式関数近似と直線近似がほぼ同じ決定係数R2を示す。<br><br>4. 考察<br><br> 上流区間に下に凸の曲線、下流区間に勾配一定の直線区間をもつ縦断形の近似曲線は、2次関数より3次関数の方が決定係数R2が大きくなることから、L-M1~L-M6では変曲点付近に勾配がほぼ一定の直線区間をもつ可能性がある。この直線区間の成因としては、①動的平衡状態(Ohmori, 1991)、②前地形の存在(中野, 1967)が考えられる。武蔵野台地東部は侵食段丘面群の性格をもつこと(舟津ほか, 2018b)や、前地形として下末吉海進途中に堆積した礫層が存在すること(舟津ほか, 2018a)とも整合的である。また、縦断形の下流側では武蔵野1面(M1面 : MIS 5c)よりも武蔵野2面(M2面 : MIS 5a)の縦断形の標高が低い。これは、MIS 5aの海水準高度がMIS 5cよりもわずかに低いため(Siddall at al., 2006)と考えられる。<br><br>謝辞: 東京都土木技術支援・人材育成センターの中山俊雄様、大澤健二様、ボーリングデータの利用において大変便宜をはかっていただいたここに記して厚く御礼を申し上げます。<br>参考文献: 遠藤ほか(2018)第四紀学会発表 ; 舟津ほか(2018a)2018JpGUポスター ; 舟津ほか(2018b)2018第四紀学会ポスター ; 平川ほか(1974)地理学評論, 47-10, 607-632 ; 久保(1997)第四紀研究, 36(3), 147-163 ; 中野(1967)築地書館, 362p ; Ohmori(1991)The Journal of Geology, Vo.99, No.1, 97-110 ; Siddall et al.(2006)Geology-October, v. 34, no. 10, 817-820 ; 吉永ほか(1986)第四紀研究, 25(3), 187-201

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713072763648
  • NII論文ID
    130007628451
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_197
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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