スペイン・アンダルシア自治州の景観政策

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タイトル別名
  • Landscape Policy in the Autonomous Community of Andalusia, Spain:
  • Attempt to Unify the Interventions Taken in Sectoral Policies
  • ―自治州各省庁による施策の総合化の試み―

抄録

1,研究の背景と目的<br><br> アンダルシア自治州は,カタルーニャ自治州とならび,スペインで最も景観に対する政策的関心の高い地域の一つに数えられる。しかしながら,カタルーニャとは異なり,景観法に相当する法律を持たないがゆえに,行政の縦割り構造のなかで,景観政策にかかわる施策が複数の省庁に分散してきた。<br><br>本研究では,アンダルシア自治州においてとりわけ景観への関与の大きい環境・地域整備省,文化省,公共事業庁(勧業・住宅省)の3つの省庁を取り上げ,景観の名のもとで作成された地図資料を手がかりに,各々の施策を分析する。さらに,こうしたバラバラな施策を一つの景観政策に結合すべく現在整備中の景観カタログに注目し,政策ツールとしての射程と課題について考察する。<br><br>2.景観への政策的かかわり<br><br> 環境・地域整備省は,森林管理や自然空間のマネジメント,生態系保護などの施策のなかで景観を扱ってきた。「アンダルシア景観地図(Mapa de los Paisajes de Andalucia)」は,同省が蓄積する膨大なデータベース(アンダルシア環境情報ネットワーク,Rediam)を活用し,主に地形,被覆,土地利用などの可視的な指標から,全自治州を83の景観エリアに区分している。<br><br> 文化省は,文化財保護の立場から,景観を歴史的建造物や考古学遺跡群などの文化遺産と結びつけて考える傾向が強い。しかし,近年では「アンダルシア文化的景観(paisajes de interes cultural de Andalucia)」プロジェクトにみられるように,自然と人間の相互関係の表れとして景観をとらえ,サイトとして可視化しようとする試みもある。<br><br>公共事業庁は,道路,港湾,河川などの土木インフラの整備が景観に与える影響を評価し,周辺景観との一体化を図る目的から,これらの景観の特性把握に基づく整備事業を行ってきた。同庁がアンダルシア景観・地域研究所(Centro de Estudios Paisaje y Territorio)との共同で手がけた「景観道路(carreteras paisajisticas)」は,道路空間の整備と景観マネジメントを結びつけるための調査研究であり,114の区間の道路景観を取り上げている。<br><br>3. 景観政策を結合するー景観カタログ<br><br>こうした個別の施策を結びつけていくためには,欧州景観条約が定義するように,景観を地域(area)としてとらえる総合的なアプローチが必要となる。「アンダルシア景観戦略」(2012年)は,総合的・協調的な景観政策を実現するためのツールとして,景観カタログを位置づけた。景観カタログとは,景観の質に関する目標を地域計画に取り入れるために,カタルーニャ自治州が開発した政策ツールである(齊藤,2011)。アンダルシアの景観カタログは,カタルーニャの先例に倣いつつ,市民参加を基礎に置く景観の質に関する目標の策定を目指している。しかし,アンダルシアの場合,景観カタログの作成が法律上裏付けられていないために,現時点では景観把握のための分析文書としての域を抜け出ておらず,地域計画への橋渡しのツールとして機能しているとは言い難い。<br><br><br><br>文献<br><br>齊藤由香 2011. スペイン・カタルーニャ自治州における景観政策の新展開―「景観目録」の作成に注目して―. 金城学院大学論集(社会科学編)7-2:13-31.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713072765056
  • NII論文ID
    130007628393
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_14
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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