<b>加賀平野北部の浅部地下地質構造と地盤の有効熱伝導率</b>

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Shallow subsurface geological structure and ground effective thermal conductivity in the northern part of Kaga Plain, Ishikawa Prefecture, Japan

抄録

1. はじめに<br><br>地中熱ヒートポンプ(GSHP)システムは,地下浅部(100m程度)に存在する熱(地中熱)を熱源として冷暖房や融雪などを行う再生可能エネルギーの利用形態の一つであり,日本での導入が近年増えつつある(環境省,2015).GSHPシステムの性能は地質(地盤の有効熱伝導率)と地下水流れ(熱移流効果)に影響を受ける.したがって,平野・盆地単位の地形・地質構造や地下水流動を明らかにし,地中熱の利用可能性(ポテンシャル)を評価することが,GSHPシステムの適切な設計にとって重要である(内田ほか,2010).そのような背景から,(国研)産総研福島再生可能エネルギー研究所は地中熱ポテンシャル評価研究の一環として,加賀平野北部の金沢市内で深度103mのボーリング調査(GS-KZ-1,36°35′38.5″N,136°37′14.9″E,+8.87m,深度55-103mはノンコア;図1)を実施した.本発表では,コアの解析結果と,加賀平野北部の浅部地下地質構造および地盤の有効熱伝導率の分布について予察的に報告する.<br><br>2. 加賀平野北部<br><br> 北東側を宝達丘陵,南西側を手取川扇状地に限られた範囲を加賀平野北部とする.沿岸部には長大な砂丘が発達し,その内陸側の北東部には潟湖である河北潟が分布する.河北潟と手取川扇状地の間は低平な蛇行原・デルタが広がり,内陸部の金沢駅周辺には,犀川と浅野川の扇状地が分布する.金沢駅の南東側には,後期更新世の河成段丘群が発達する(中村ほか,2003).<br><br>3. GS-KZ-1コアの解析結果<br><br>層相:深度0.5-34.8mは主にシルト層と砂層の互層であり,深度約15-23mには生痕や貝殻片が見られる.34.8m以深は砂礫層を主体とし,深度約35.9-36.9mと42.3-45.8mに砂・シルト層を挟む.深度55mより下位(ノンコア部)は約92mまでが礫層,92-103mまでが泥質層である.<br><br>14C年代:深度5.31-36.45m間で植物片・木片や貝殻を20試料採取し,株式会社加速器分析研究所に測定を依頼した.得られた14Cの値は3,560-10,475 cal yBP(2σ) であった.<br><br>層序:深度約36mまでの堆積物は沖積層である.36m以深の礫層は,絈野(1992)の第一礫層に相当する.本報告では第一礫層より上位の堆積物を沖積層と呼ぶ.<br><br>4. 浅部地下地質<br><br>ボーリング柱状図資料と深井戸資料から作成した加賀平野北部の地質断面図を用いて浅部地下地質を検討した.第一礫層の上面高度はコア地点では約-26mであるのに対し,河北潟では-70m付近にあり,南西から北東へ向かって深くなる.沖積層の層相は地域によって異なる.金沢市街地ののる扇状地では専ら礫層で構成されるが,扇端部では砂層や泥層を中部に挟むようになる.蛇行原・デルタでは砂泥互層を主体とする.砂泥互層は,泥層のN値が5-15程度を示す下部と,5以下を示す上部に大別される.河北潟周辺では上部がほぼ泥層からなる.沿岸部では最上部に厚い砂丘砂がのる.<br><br>5. 地盤の有効熱伝導率<br><br>地盤の有効熱伝導率(W/m・K)は,地層と間隙水(不飽和帯では空気)の合成値で表される.一般に間隙率が低いほど有効熱伝導率が高く,堆積物では礫,砂,泥の順に値が大きい.柱状図資料から有効熱伝導率を推定するには,対象深度までの地質の種類(礫,泥など)を読み取り,地質ごとの有効熱伝導率(地中熱利用促進協会, 2014など)と出現深度数(合計層厚)の加重平均によって求める.GS-KZ-1地点を例にとると(地層は全て飽和と仮定),地表から深度20m, 30m, 60m, 90mまでの平均有効熱伝導率はそれぞれ1.49, 1.49, 1.67, 1.78(W/m・K)となり,礫層の割合が増す30m以深で値が改善される.加賀平野北部の地下地質を踏まえると,扇状地,蛇行原・デルタ,河北潟周辺の順に値が大きいと予想される.一方,地下水位が深い(不飽和帯の割合が大きい)所では有効熱伝導率が低下するため,砂丘や段丘では不飽和帯の厚さを慎重に評価する必要がある.<br><br>謝辞:本研究は,(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「再生可能エネルギー熱利用技術開発」の一環で行われたものである.記して謝意を表します.<br>文献地中熱利用促進協会 2014. 地中熱ヒートポンプシステム 施工管理マニュアル.173p. 環境省 2015. 地中熱利用にあたってのガイドライン.154p. 絈野義夫 1992. URBAN KUBOTA, 31, 48-54. 中村ほか 2003. 活断層研究, 23, 69-76. 内田ほか 2010. 地熱学会誌 32: 229-239.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713072766208
  • NII論文ID
    130007628412
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_129
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ